数年前に『ロッキー』シリーズの続編の噂を聞いたときは、正直「何をいまさら」と思った。主人公のロッキーを演じるシルベスター・スタローンは1946年生まれ。間違っても現役ボクサーを演じられる年ではない。それが、再びリングに上がり、チャンピオン相手に一戦を交えるという。そんな陳腐な設定で、ボクシング映画の金字塔ともいえる同シリーズの最後を締めくくっていいのか、と。
物語が進み、若くて強いチャンピオンに果敢にも向かっていくロッキーを目の当たりにして、思わず声援を送っている自分がいた。試写室で完成作を見ながらこみあげてきた感情は、熱くて、非常に心地のよいものだった──。
本作の話をする前に、まずは『ロッキー』シリーズについて振り返ってみよう。はじまりは、まだ無名の俳優だったスタローンがモハメッド・アリの試合に感動。3日間で『ロッキー』の脚本を書き上げたことに端を発する。早速、売り込みを開始。その際につけた条件が、自らが主人公を演じること。こうして、わずか100万ドルという低予算ながら、スタローンの脚本・主演で撮影がスタートする。
映画の公開は76年。これが世界的な大ヒット作となったばかりか、作品の質も高く評価され、アカデミー賞では作品・監督・編集賞の3部門に輝くことに。以降、本シリーズは90年までに、全5作品が製作される。一方でスタローンは、『ロッキー』を皮切りに、『ランボー』などのアクション映画に主演。次々とヒットさせ、アクションスターしての地位を確立していく。
だが、永遠にアクションスターではいられない。いつかは肉体が衰えるからだ。スタローンもどこかで、肉体を武器にしたアクション俳優から演技派へと転じる必要があった。その現れが97年の『コップランド』。しかし名演技を見せるものの、人気とリンクせず、少しずつ“最盛期を過ぎたスター”へと追いやられていく。
そんな最盛期を過ぎたスターに見えていたからこそ、スタローンが再度、ロッキーを演じることに違和感があった。「単なる悪あがきに過ぎないのではないか?」と。だが、その懸念は杞憂だった。本作でロッキーは、勝つためにリングに上がるのではなく、生き様を見せるためにリングに上がるのだから。




