のっけから嗅覚を刺激するような映像で幕を開けるのが、世界中で1500万部を超えるベストセラー小説『香水 ある人殺しの物語』を映画化した本作だ。これはパトリック・ジュースキントが1985年に刊行した小説。15週間連続トップになる人気ぶりに、映画化権をめぐって争奪戦が繰り広げられるが、ジュースキントは頑として首をタテにふらなかったという。そんな作品が20年の歳月を経て、ついに劇場に登場した!
時は18世紀半ば。活気と悪臭に満ちたパリの魚市場で1人の子どもが産まれる。彼の名はジャン=バティスト=グルヌイユ。孤児ながらも、何キロも先の匂いを嗅ぎ分けることができる嗅覚という、類い希なる才能を持っていた。やがてグルヌイユは、パリの香水調合師バルディーニに弟子入りし、香水のつくり方を学ぶことに。
だが彼には、忘れられない香りがあった。それは、パリの街角で出会い、誤って死に至らしめてしまった赤毛の少女の香り。美しい少女の香りに魅せられた彼は、やがて禁断の香水づくりに着手することになる……
18世紀を舞台にしたコスチューム映画で、ちょっとアート系。と、こうした映画は、普通だったらハリウッドの娯楽大作が好きそうな男性諸氏にはオススメしない。にも関わらず、ここで取り上げたのは、どんな人でもこの映画がもつ、猟奇的で危険な香りのするエピソードにグイグイと引き込まれてしまうと思ったから。至高の香水を求める主人公の気持ちは留まるところを知らず、ついに彼は、そのつくり方を見つけてしまうのだ。
スピルバーグやマーティン・スコセッシという巨匠ですら獲得できなかった映画化権を手にしたのは、『薔薇の名前』で知られるプロデューサーのベルント・アイヒンガー。監督は『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ。主人公のグルヌイユ役にトレヴァー・ナンの舞台『ハムレット』で批評家の絶賛を浴びたベン・ウィショー。ほかに、名優ダスティン・ホフマンが香水調合師バルディーニ役で出演するなど、欧州映画らしいシブいキャスティングも魅力の1つ。




