純粋で一途で、のっぴきならない愛。久しくこんなにまで切ない愛の物語を見たことがなかった。それが、この映画を見た感想だ──。映画『愛の流刑地』は、渡辺淳一が日本経済新聞に書き下ろした連載小説。“愛ルケ”の愛称で社会人を中心に読まれ、あまりにも過激な性描写や衝撃的な結末が話題を呼んだこの作品が、愛の深さ、素晴らしさを問う映画として生まれ変わった。
時系列で綴られて行く原作とは異なり、映画は、主人公の小説家が、情事の果てに付き合っていた女性の首を絞め、殺してしまうシーンからスタートを切る。彼の名前は村尾菊治。かつて恋愛小説の旗手として注目されたものの、最近は新作を発表することもない彼が殺めてしまうのが、3人の子を持つ人妻・入江冬香だ。やがて気を取り直した菊治は、自ら警察に通報。取り調べと裁判を通じて、次第に2人の関係が明らかになってゆく。
2人が出会ったのは、その前年の秋。知り合いの編集者から、彼の大ファンということで紹介されたのが冬香だ。2人はそこで恋におち、愛し合い、やがて冬香は情事の最中に「お願い、殺して」と求めるようになる。そして事件の夜、これまでにも幾度となく懇願されてきた「殺して」の言葉に誘われるかのように、菊治は絞め殺してしまうのだ。
「なぜ男は女を殺し、なぜ女は死を望んだのか?」。物語が進むにつれ明かされるのは、この1点だ。最初は大胆な濡れ場シーンや、ちょっと猟奇的な殺人事件に興味をそそられた観客は、次第に、この「なぜ?」というミステリーに引き込まれて行く。法廷を舞台に、女検事や弁護士、数々の証人らによって、少しずつ浮き彫りになってゆく愛と死の真相──。それこそが、この映画の醍醐味なのだ。





