2003年に「星々の船」で直木賞を受賞した村山由佳。その村山が、93年に小説すばる新人賞を受賞し、94年に単行本発売した小説「天使の卵」が、ついに映画化された。これまでに100万部を超えるベストセラーとなり、数多くの映画化・ドラマ化の話が持ち込まれる中で、「いつも最後の1ピースがはまらず、実現に至らなかった」と村山自身が話す、この作品。その最後の1ピースが見事にはまり、映画に生まれ変わった本作の、魅力に迫る。
主人公は美大志望の予備校生、一本槍歩太。彼には夏姫という恋人がいるが、ある日、満員電車で出会った女性が忘れられなくなる。それから数日後、奇跡の再会が訪れる。歩太の父が入院している病院に、彼女が姿を現したのだ。彼女の名前は春妃。自分より8歳年上で、父の新しい主治医だという。だが、驚きはそれだけではなかった。春妃は、歩太の恋人、夏姫の姉であったのだ。
物語は、歩太、夏姫、春妃の3人を中心に展開する。恋人の夏姫をフリ、春妃にぞっこんになる歩太。姉の春妃に対し、焼き餅を焼く夏姫。そうした中、春妃は、2人の間にはさまり、身動きがとれないでいる。さらにもう1つ、彼女には、夫を自殺で亡くしたという秘められた過去があった……。
好きになった人が恋人の姉であったり、その人に不幸な過去があったりと、確かに物語もドラマチックだ。だが、それ以上に胸を熱くさせるのは、歩太、夏姫、春妃の3人が、人を思いやる気持ちを持ちながらも、好きになってしまった自分の心にウソをつけないところではないだろうか?
例え、恋人や妹を傷つけたとしても、心にウソをつかないピュアさ。人をきちんと愛することの、重さ、素晴らしさが、スクリーンを通して、しっかりと伝わってくる。




