かつて、これほどまでに躍動感に満ちあふれながらも、心を締め付けられる映画があっただろうか──。映画『RENT/レント』は、ブロードウェイのミュージカルを映画化した作品だ。ロックをベースにしたドラマティックな音楽を身にまとい、傷だらけの愛や夢を抱えた若き芸術家たちのドラマが幕を開ける。貧困、犯罪、エイズ、ドラッグ、同性愛、そして友の死と、そこで語られるドラマの1つひとつが、まるで天使が打ち放つ矢のごとく見る者の心に突き刺さるのだ。
そもそも、この作品のベースとなっているのは、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』。1830年頃のパリの下町が舞台であったこのオペラの設定を、1989年〜90年のニューヨークに置き換え、イースト・ヴィレッジに暮らす貧しき芸術家や恋人たちの姿を描いている。タイトルの『RENT/レント』とは、毎月の家賃も払えないような彼らの暮らしからとったものだ。
初演は1996年2月のこと。ダウンタウンにあった小劇場からはじまるが、瞬く間に話題を集め、わずか3か月でブロードウェイの大劇場に進出。その後は、演劇界のアカデミー賞と称されるトニー賞など各演劇賞を総なめし、ミュージカルとしては異例のピュリッツァー賞にも輝いている。
さらに上演前には、このミュージカルが“伝説”となるような哀しい出来事が起きる。それは、脚本・作詞・作曲を手がけたジョナサン・ラーソンの死。プレビュー公演の前日に彼は、わずか35歳の若さで大動脈破裂のため、突然、この世を去ったのだ。





