監督デビュー作『紅いコーリャン』で、いきなりベルリン映画祭グランプリを獲得。その後も『秋菊の物語』『あの子を探して』でベネチア映画祭グランプリ、『活きる』ではカンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞するなど、名だたる映画祭で最高の賞を獲り作り続けてきたのが、中国の監督チャン・イーモウだ。一方で、2003年に『HERO』、2004年には『LOVERS』を放つなど、ヒットメイカーとしても見事な手腕を披露中。そんな監督が、新たに挑戦したのは、日本を代表する名優・高倉健とのコラボレーションだった。
物語は、親子の、そして人と人との心のふれあいを丁寧に紡ぎながら進行する。高倉健扮する主人公の高田には、確執を抱え、もう何年も会っていない息子がいる。ある日、高田は、その息子が余命幾ばくもないことを嫁から聞かされてしまう──
些細なボタンの掛け違いから、仲違いしたままの父子。2人はともに、いつかは仲直りできると思っていたかも知れない。だが、その機会が訪れるよりも早く、息子は天に召されようとしているのだ。そうした中、父が取った行動は、民俗学者の息子に代わって、彼がやり遂げようとしていた仮面劇「千里走単騎」を撮影するため、中国の奥地を訪れることだった。
30〜40代の方ならきっと、この映画を見ながら、自分の父親を思い浮かべるだろう。仲がいい、悪いに関わらず、男同士ゆえに、妙な距離感があったり。一緒にいると気詰まりで、世話も焼いてくれないが、最後には信頼してくれたり。高倉が演じる“父”も、まさにそういうタイプ。不器用にしか愛情表現できない姿に、自分の父親をダブらせながら、知らず知らずのうちに引き込まれてゆく。




