昭和30年代をモチーフにしたテーマパークに迷い込んだような、懐かしくて、楽しくて、あったかい気分にさせてくれる映画が、この『ALWAYS 三丁目の夕日』だ。原作は、西岸良平(さいがん・りょうへい)が1974年に連載を開始した「三丁目の夕日」。大っきな頭の登場人物と、ほのぼのとした絵やエピソードで人気のコミックが、『ジュブナイル』『リターナー』を手掛けた視覚効果の第一人者・山崎貴監督で映画化されたのだ。最新の視覚効果を駆使して、この作品が描いたもの──。それは、観客の心をくすぐるニッポンの原風景だった。
舞台は、東京タワーが完成する年である昭和33年の東京。下町の夕日町三丁目には、個性豊かな住民たちが暮らしている。妻のトモエ(薬師丸ひろ子)と小学生の息子と共に、自動車修理工場・鈴木オートを切り盛りする鈴木則分(堤真一)もその1人。その鈴木オートにある日、集団就職で星野六子(堀北真希)がやってくる。
物語はこの一家を中心に、駄菓子屋の店主をしながら小説家を目指す茶川竜之介(吉岡秀隆)、一杯飲み屋のおかみ・ヒロミ(小雪)といった、個性的な“ご近所さん”を巻き込み展開する。「昭和っぽい人たち」をキャスティングしたという山崎監督の言うとおり、どこかレトロな雰囲気を漂わす出演者の存在感も、この映画を成功に導いた一因だ。
と同時に、見る者をワクワクさせてくれるのが、集団就職、蒸気機関車、オート三輪、駄菓子屋、力道山の試合のテレビ中継と、まるで昭和30年代を切り取ったかのように、次々と登場する懐かしいアイテムの数々。また、氷で冷やすタイプの冷蔵庫が捨てられ、電気式の冷蔵庫に取って代わるなど、時代の流れを描く手法も見事。
極めつけは、スクリーンで再現された昭和30年代の町並みだ。都電が走り、看板建築の商店が並ぶ町並みや、上野駅とその周辺、夕日町三丁目のセット。そして、少しずつ完成に向け積み上がっていく東京タワー。こうした映像だけでも、この映画を見る価値があると言い切ってしまいたくなるほど、1つひとつのシーンの完成度は高い。




