ミニシアター映画ながら、その後、全国区のヒット作となり、興収3億円超、5カ月に及ぶロングランと、記録ずくめの『ジョゼと虎と魚たち』。切ない感動を呼んだこの映画の“監督・犬童一心×脚本・渡辺あや”コンビが次に放ったのは、ゲイの老人ホームという一風変わったテーマだった。
舞台となるのは、タイトルにもなっている“メゾン・ド・ヒミコ”と名付けられた老人ホーム。個性的なゲイばかりが住むこのホームに、ある日、沙織(柴咲コウ)という女性が手伝いとしてやってくる。
「私を迎えに来たのは、若くて美しい男。彼は、父の恋人だった」というコピーにあるとおり、実は沙織は、このホームの創設者であるヒミコ(田中泯)の娘なのだ。だが彼女は、自分と母を捨て、ゲイバー“卑弥呼”の二代目ママとなり、奔放に生きてきた父のことを許していない。にもかかわらず、やって来たのは、父の恋人である春彦(オダギリジョー)に「父がガンで余命幾ばくもない」と聞かされたからだ。
かくして、不思議な人間ドラマの幕が切って落とされる。
物語の合間合間で、観客を惹き付けるのが、ホームに住むゲイたちが見せる様々な横顔だ。実はゲイ役の出演者の何人かは、ホンモノのゲイ。「日本映画でよく見かける脇役俳優が出ていると、観客が『あの人はゲイじゃないよね』って思ってしまう」。そう考えた監督のこだわりが反映されている。それゆえか、スクリーン越しに伝わってくる、陽気であけっぴろげな彼らの輝きは、自分に正直に生きることの素晴らしさを眩しいほどに感じさせてくれる。




