本年度の米国アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞の主要4部門を制したのが、この作品だ。ノミネート段階では7部門と、最多11部門ノミネートの『アビエイター』に水をあけられていた。クリント・イーストウッドが受賞した監督賞も、下馬評では『アビエイター』のマーティン・スコセッシが5度目のノミネートで悲願達成か?と言われていたが、それを押しのけた格好だ。だが、それもこれも映画を見れば納得! イーストウッドは“女のボクシング”という地味なテーマを見事に調理してみせた。
L.A.のダウンタウンでボクシングジムを経営するトレーナーのフランキー(イーストウッド)は、実力はあるが経営ベタで、苦労して育てたボクサーには、軒並み去られてしまう始末。そんなフランキーの元に、ある日、31歳のマギー(ヒラリー・スワンク)がやってくる。女なんて眼中にないとばかりに相手にしないフランキーだったが、自分の才能を信じ、ひたすら練習にはげむ彼女の姿に次第に心を動かされ、ついにトレーナーを引き受けることに。やがてマギーはメキメキと実力を上げ、頭角を現すが……。
「これは父と娘のラブストーリーだ」──そう語るのはイーストウッドだ。彼が演じるフランキーは、実の娘がいるものの縁を絶たれている。一方のマギーもまた、貧乏な暮らしを続け、家族の愛に恵まれないでいた。共に不器用で、愛情表現がヘタ。そんな2人がボクシングを通して互いに心を通わせ、信頼関係を築いていく様子が丁寧に描かれていく。そして後半、ある事件をきっかけに2人の絆の深さを見せつけられた観客は、きっと涙を流すことだろう。




