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後期高齢者医療制度と世帯分離

2008年5月14日

後期高齢者医療制度の話題が毎日ニュースで取り上げられています。「名称が悪い」から始まり、お年寄りの少ない年金から「保険料を天引きするのはけしからん」といったもの、「制度が複雑で分からない」など、批判が集中しています。

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の高齢者だけを対象とした健康保険制度を新たに設立したものです。従来の健康保険制度は、高齢者と若い現役世代とが同じ保険に加入していたので、健康保険を多く利用する高齢者の分まで、現役世代が保険料を負担していました。そのため、現役世代に加重な負担を強いないように、75歳以上の高齢者を分離して新制度を作り、高齢者に保険料の負担増を求めるのが最大の特徴となっています。医療を受けたときの窓口負担は1割(高所得者は3割)でこれまでと変わっていません。

均等割は高齢者と世帯主の総所得で決まる

新制度の保険料は、計算が複雑で一般の人には理解しにくい仕組みになっています。現に筆者が、新制度を運営する自治体の後期高齢者医療広域連合に問い合わせをしても、担当者によって回答が異なるありさまです。そのため、新聞や雑誌などでの取り上げ方の多くは、制度の紹介に過ぎず、高齢者自身がどう対策を取ってよいかまでは及んでいません。

そこで、新制度移行に際して、年金暮らしで所得が少なく、子ども世帯と同居している高齢者にとって有利な対策を紹介いたします。

新制度において75歳以上のすべての人が負担する保険料の内訳は、だれもが負担する「均等割」と、その人の所得に応じて負担する「所得割」になっています。したがって、収入がまったくなくても、均等割の保険料は支払わなければならないことになります。ただし、均等割は、高齢者と世帯主の所得を合計した総所得に応じて2割軽減、5割軽減、7割軽減が適用されます。

そこで、所得の少ない高齢者が子ども世帯に扶養されて同居している場合には、親世帯が子ども世帯と「世帯分離」をすれば総所得が少なくなり、均等割の軽減措置を受けることができます。具体的には、サラリーマンの子ども家族と同居している高齢者夫婦の場合、世帯主が子どもの場合では、高齢者夫婦のそれぞれの所得に世帯主である子どもの所得を合計した総所得額が均等割の対象となります。しかし、高齢者夫婦が子ども家族と同居したまま世帯分離をすれば、子どもの所得は加算されないので総所得金額は少なくなり、均等割も少なくなるのです。

・均等割は、同一世帯の75歳以上の高齢者と世帯主の総所得の合計額をもとにした7割・5割・2割の軽減措置がある。なお、会社員・公務員の子どもに扶養されていた高齢者には激変緩和措置が講じられ、平成20年9月までは徴収なし、21年3月までは9割軽減、22年3月までは5割軽減される。
・所得割は、高齢者一人ひとりの所得をもとに計算され、東京都では平成21年度までは所得に応じた軽減措置がある。

世帯分離で均等割が7割減になるケースも

東京都のケースで見てみましょう。例えば、図表のケース1では、世帯主の子どもの年収が600万円あるため、子どもが世帯主のままだと両親は均等割の軽減措置を受けられずに夫婦合計で7万5600円の年間保険料を負担することになります。

しかし、世帯分離をして父が世帯主になった場合には、両親の所得のみを合計するだけでよく、子どもの所得は加算されないので総所得が低くなり7割の軽減措置を受けることができます。その結果、両親は合計で2万2600円の年間保険料となり、5万3000円も負担が軽くなります。

一方、世帯分離しても軽減措置を受けられないケースもあります。ケース2では、父の収入は年金収入と不動産所得の合計330万円と多いので、世帯分離をしても軽減措置が受けられません。

世帯分離をすることが有利かどうかは両親の総所得に応じて決まります。世帯分離をしたほうが有利な総所得の目安は、両親の場合133万円以下、父、母のいずれか単身の場合には83万円以下です。

総合的に判断して対応する

世帯分離前に子どもが両親を税法上(所得税)の扶養家族にしていた場合、世帯分離後も今までどおり生計を一にしていれば、引き続き両親を扶養控除することができます。

また、後期高齢者医療保険制度では国民健康保険や介護保険と同様に住民票で「住所」「世帯」を判断するので、世帯分離をする場合には役所に届け出ることが必要となります。

世帯分離は心理的にも抵抗がある向きもあります。したがって、新制度の有利、不利だけで決めるべきものではなく、あくまでも対応策の一つと考え、家族の暮らし方などをもとに総合的に判断することをお勧めします。

紀平 正幸(きひら・まさゆき)

多摩大学大学院客員教授(パーソナル・ファイナンス)。ライフカウンセラー・心理カウンセラー。

ライフプランにかかわる幅広い分野について、テレビのコメンテーターや、公的機関、金融機関、企業、一般生活者などを対象とした講演、執筆、個別相談を行うかたわら、大学付属病院の精神科病棟で心理カウンセリングのボランティア活動を行っているなど、経済的な問題にとどまることなく心の問題まで人生の生き方全般について関わっている。

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