(聞き手:柏崎 吉一=フリーライター)
(前回記事はこちら)
■著書『臆病者のための株入門』(文藝春秋)のなかで、株式投資に関して、次のような前提を示していますね。
(1)確率のゲームである(ぜったいに儲かる方法はない)
(2)株式市場はおおむね効率的であるが、わずかな歪み(ゆがみ)が生じている(その歪みは有能な投資家によって発見され、すぐに消滅してしまう)
(3)資本主義は自己増殖のシステムなので、長期的には市場は拡大し、株価は上昇する(それがいつになるかはわからないが)
これらは、具体的にどういうことでしょうか。
株式投資の3つの前提
橘 まず、(1)確率のゲームについてです。市場にはさまざまな投資家が参加しています。2005年12月、株の誤発注事件で大もうけしたデイトレーダーが注目を集めました。メディアが彼を成功者として取り上げると、「私にもできるのでは」と勘違いをする人が出てきました。宝くじと同じですね。彼が何百億円もの資産をつくったからといって、誰もが同じことをできるわけではない。仮に100万円を100億円に増やした人がいれば、彼が得た99億9900万円は誰かの懐から出ていっているわけです。デイトレードなどの短期売買はゼロサム・ゲームです。それを客観的に見る冷静さが重要です。
(2)の歪みについて。金融制度や金融市場には、あまり知られていないわずかな歪みがいろいろあります。裏返せば、それらを上手く利用することで儲けることができ、より快適な人生を設計できます。それも合法的に。
一例を紹介しましょう。米国で発行されている割引債を日本の証券会社で購入すると、購入時に18%の税金が源泉徴収されます。しかし、同じ割引債を海外の証券会社で購入すると償還までは無税で所有できます。
米国には10年以上の長期割引債があります。リタイア後を海外で過ごしたい人は、例えば60歳になったときに満期の来る割引債を買っておく。この割引債の譲渡益を受け取るとき、日本に住んでいなければ非課税です。これで合法的に節税することが可能です。
最後に(3)の資本主義の自己増殖について。「長期的には世界経済は成長していく」という前提に立てば、長期投資が有効です。
さらに資産を国際的に分散しておけば、将来のインフレリスクに備えることもできる。仮に日本政府が借金を減らすことを考えたら、増税よりもインフレにするほうがずっと簡単です。そのとき、円建ての預貯金などだけで金融資産を保有していると、その価値が大きく目減りしてしまいます。外国株式など外貨建て資産を保有しておくことはインフレのリスクをヘッジするのに有効な手段です。老後を海外で過ごしたり、子供の留学資金に充てる場合にも役に立つでしょう。




