(聞き手:柏崎 吉一=フリーライター)
「海外投資を楽しむ会(AIC)」創設メンバーの一人。2002年『マネーロンダリング』(幻冬舎)で作家としてデビュー。ほかにも『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』、『得する生活』(いずれも幻冬舎)、『臆病者のための株入門』(文藝春秋)など、「一人の投資家」の視点に立ち、お金との付き合い方を考察した著書多数。翻訳に『不道徳教育』(講談社)などがある。
「株式投資を始めてから新聞の読み方が変わってきた。経済面はもとより、金融に影響を与える国内外の政治の動向にも興味が出てきた」という人が周りに増えてきた。橘玲氏も「投資の面白さは、儲けることもさることながら、世の中の見方が変わったり、人生設計の選択肢がぐんと広がったりすることにある」と言う。
橘氏は投資するにあたって、購入する金融商品が、リスクとリターンが釣り合った“ちゃんとした商品”なのかどうか、を見極めることが大切だと指摘する。加えて、「投資は勉強しても報われない世界であること」を理解すべきだと言う。
■日本でも株式投資に関心を持つ人が増えてきました。これからは、どんな人も株式投資をやった方がよいものでしょうか。
橘 私たちは資本主義社会に身を置いています。そうである以上、何らかの形でお金を稼がないと生活できません。本業で十分に稼げれば幸せでしょう。しかし、それで不十分であれば、「投資」や「副業」によって副収入を得る道を探ることになります。どの方法を選ぶかは人それぞれの判断です。効率的にお金が稼げる方法が見つかればそれに越したことはありません。
仮に副収入を得る道として「投資」を選択するのであれば、それなりの資産規模が必要です。そうでないと、背負うリスクがおのずと大きくなります。例えば、元手が100万円しかないのに、10万円増やそうとすると、年10%の利回りで運用しなければなりません。高利回りの金融商品は、元本割れなどの下振れリスクが高くなります。
人件費の高い日本における合理的な選択は、働いて稼ぐこと
橘 若い世代は、「投資」に時間を割くよりも、本業/副業にかかわらず働いてお金を稼ぐ方が有利だと思います。1年で10万円の追加収入を得ようと思えば、今の日本では、ちょっとアルバイトをすればよい。このほうが投資よりはるかに確実です。“世界で最も人件費の高い国に生まれた幸運”を積極的に活用することが、経済的な合理性に基づく最良の判断だと思うのです。ミドルエイジの人も、投資でお金稼ごうとするより、奥さんに働いてもらったほうが、確実に収入が増えるのではないでしょうか。
ただ、リタイアして労働市場から収益を得るすべを失えば、誰もみな最後は一人の投資家にならざるを得ません。そのときに慌てないために、若いうちから少しずつ勉強しておくことが大事です。仮にリタイアの時点で十分な資産があれば、個人向け国債など安全な商品で運用すればよいでしょう。強いて大きなリスクをとる必要はありません。しかし、どのような戦略をとるにしてもある程度の金融リテラシーは必要です。
例えばリタイア後に「先物取引をやりませんか」と勧誘されたとします。なんの知識もなければ、うまい話に簡単にだまされてしまいます。いっぽう金融リテラシーを身につけていれば「すでに十分な資産があるので、先物取引のリスクを取る必要はない」と自分の判断に基づいて断ることができます。もちろん、資産構成や投資戦略によっては「総資産の10%までなら、リスクをとって収益機会を追求したい」と判断することもあるでしょう。




