(聞き手:大沢 玲子=フリーライター)
(前回記事はこちら)
■話がうますぎるように聞こえます。
武者 私のような意見は少数派です。多くの人がだまされたような気になるのも当たり前です。なぜかと言えば、多くの人はテキストブックの上での合理性にとらわれて、現実を十分に見ようとしていないからです。「リターンが高くて、コストが低い。そんなうまい話が存在するわけはない」…そう考えるわけです。

ドイツ証券 副会長兼CIO 武者 陵司さん
世界経済の統合がすさまじい勢いで進行するとともに、労働力の著しい不等価交換が進んでいる。いわば経済革命です。その恩恵を特定の階層が得ている。その受益者が欧米の多国籍企業であり、日本企業であり、日本の消費者であるわけです。
これらの現象が、どのぐらいのマグニチュードで投資の世界に影響しているのかは、従来の経済学では証明できません。従来の経済学では説明できない、明らかに不思議な現象が現実に起こっているのです。米国では、景気がいくらよくなっても、金利が上がらない。もっと言えば、あれだけの財政赤字や貿易赤字を抱えていて、なぜドルが暴落しないのか。赤字の額を見れば、3〜4年前に暴落していないとおかしい。
なぜ、おかしいことが起こっているのか。その背景を探るには、これまでの常識を捨て、仮説を立てて考えてみる必要があります。市場はつねに、現実が常識を覆していくものです。私がこれまで述べてきた仮説を立てたのは、去年の12月。今は、「ほぼ正しい」という確信を持っています。
■10月前半、米国のニューヨークダウが最高値をつけました。日本でも年初来最高値の株価をつける企業が出ています。相場上昇が復元する兆候が現れているということでしょうか。
武者 投資というのは、グローバルな動きのなかで考えるべきです。世界がリセッション(景気後退)に向かっているのに、ある会社だけが儲かるということは考えにくい。その逆もしかりです。世界がリセッションに向かっているのか、そうでないのか。目の前の小さな値動きに踊らされるのではなく、大きなロジックに従うべきです。




