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■「株価チャート分析本」、「短期トレードの指南本」といった投資本が多く出回っています。

板倉 それらの大半はインチキだと思います。過去のグラフを見て、後付けで解説することなんて、だれにもできます。著者がデイトレでもうけた。それが事実としても、一時期だけのこと。読んだ人が、同じように売り買いすればもうけられるかというと、そんなことはない。

2000円やそこらのチャート本を読むだけで、株で数億円もうかるなんて、うまい話はありません。そういう当たり前の感覚を失ってしまっている人が多い。メディアが短期トレーダーを持ち上げたこともその一因でしょう。

投資であれ消費であれ、経済活動で成功するには、支払った価格以上の価値を手に入れることが必須です。それに加えて投資については、時間の経過とともに価値が増大する対象に投資するべきです。

■企業の価値を知るには、どのような勉強をすればよいのでしょうか。

板倉 企業価値を測定するには、企業価値評価の方法を学ぶしかありません。それが、ディスカウントキャッシュフロー法です。当事務所ではセミナーも開いています。ただし、素人が独りで勉強して、1日や2日で学べるようなものではありません。覚悟をもって臨むべきものです。

分かりやすい例を一つ挙げます。

例えば、100万円を1年間、年率20%で友人に貸すとします。友人の返済に対するリスクを年率20%とするわけです。トラブルがなければ、1年後には120万円戻ってきます。これをファイナンス的に見れば、1年後、120万円を受け取る権利を今日現在、100万円で買った、と言えます。今日の100万円と、1年後の(その友人からの)120万円が、今日現在、同じ価値だと認識したからこそ、年率20%でお金を貸す(=投資する)わけですね。

株式投資の場合も同じです。投資家から観た企業価値は、その企業が将来生み出すであろう、投資家に帰属する現金収支(キャッシュフロー)に担保されています。それをいま現在いくらで買ったら妥当なのか、現在価値を割り出すわけです。

投資とは、「現時点での確かなキャッシュを支払うことによって、将来の不確かなキャッシュフローを手に入れる」という行為です。

企業価値を評価するためには、企業のビジネスモデル、財務諸表、経営環境、競争優位性など、さまざまな側面からの分析が必要となります。その理論を学習し実践するのは、決して容易なことではありません。『企業価値評価』(マッキンゼー・アンド・カンパニー著 ダイヤモンド社刊)などの本が出ています。しかし、最初の数ページで投げ出してしまう人が多いでしょう。しかし、この方法以外で企業価値を算定することは不可能なのです。

PER(株価収益率)*1やPBR(株価純資産倍率)*2といった指標はアテになりません。これらはある企業の単独期の業績と株価の関係を示す指標にすぎないからです。企業価値とは、その企業の将来性を織り込んだものです。ある瞬間しか示さない指標をどう組み合わせても、企業価値を測るものにはなり得ません。

もちろん、それらの数値を見て動く短期トレーダーによって、短期の株価推移に影響はあるでしょう。しかし、先に申し上げたように、あくまでも一時的な動きにしかすぎません。

*1:株価が、1株当たりの利益の何倍に相当するかを示す指標。
*2:株価が、1株当たりの純資産額の何倍に相当するかを示す指標。

板倉雄一郎さんへのインタビューは2回の連載です。次回は6月26日(月)に公開します。資産配分に対する考え方を伺います。

大沢 玲子

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。NTT勤務を経て、出版社へ。経営実務誌、男性誌、女性誌の編集に携わる。現在は、フリーランスとして、ビジネス誌を中心に執筆。

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