恐怖を呼び覚ますジェットコースターの悲鳴
サヘル・ローズは1985年、イランのクルディスタンの近くにある小さな町に生まれた。
しかし、この「1985年生まれ」というのは、後になって付けられた誕生年であり、本当のところは86年かもしれないし84年かもしれないという。
なぜなら、彼女の住む町は大規模な空爆に遭い、両親と10人のきょうだい全員が亡くなってしまっているからだ。
1980年に起きたイラン・イラク戦争は88年8月に一度は停戦の合意に達したものの、その後も頻繁に空爆がつづけられていた。
「今でも雷や花火などを見ると、恐怖感とともに思い返すことがあります。幼いころはジェットコースターに乗っている人たちの悲鳴を聞いても体が震えてきたほどでした。空爆の下で耳にしていた悲鳴と同じですから」
決して楽な暮らしではなかった。食べ物にも事欠く日が多かった。サヘルのかすかな記憶の中に、自分がどこかの家にもらわれかかった光景がある。しかし、話し合いがうまくいかなかったのか、両親の元で暮らすことになった。






