永遠にピカピカの建物はいらない
隈研吾は居間的な空間や庭の再生、地方の風土に根付いた建築という思想を実現する一方で、東京・表参道のファッションビルやJR渋谷駅改修計画など、流行の先端の地でのプロジェクトも手掛けている。そこでも「回帰」というキーワードは通用するのか。隈自身は「根底にあるコンセプトは同じ」と言うが、ギャップや矛盾は存在しないのか。

「渋谷駅の仕事について言えば、無理に渋谷らしさを意識しないでサラッと作りたかった。それこそが渋谷っぽいと思ったから(笑)。流行という観点から見ると、若者文化があって、さらには『ファッション性の渋谷対オタク文化の秋葉原』みたいな対立軸がよく言われているけど、僕はそんなに極端なものだとは思っていない。もう少し深いところを読み解けば、人間が都市のなかでひとりになったというか、家族や企業、公への帰属意識という縛りから解放されて自由になったという点を重視している。これまでの企業ビルや公共施設には、人々の帰属意識を高めるようなモニュメントを求める傾向があったけれど、都市全体を生活の場としたいと願う人々の空気感のなかにあっては、もはや時代遅れだと思う。だからJR渋谷駅では“サラっとした感性の都市デザイン”を表現したかった」
「表参道についても、僕が小学生の頃から知っている場所だからいろいろな思いがあった。今では流行の発信地と言われているけれど、それも『明治神宮への参道として人々が行き交う地』という歴史のうえに成り立っているものです。木材でできている神社やあのケヤキ並木は、時代の流れとともにどんどん変化していく。それは古びるということではなく、むしろ月日が経つほど味わい深くなる。商業施設というと、これまでは『永遠のピカピカ』が求められてきました。洗練された人工物の素材と近代的なデザインがいいという常識を打ち破りたくて、ONE表参道には木材のルーバー(縦格子)によるファサード(建築物正面の外観)を採用した。季節とともに移ろうケヤキ並木と重ねて眺めてもらえば、その美しさを理解してもらえると思う。実際、ファサードの色目は2003年の竣工時から相当変化しています。これまでの商業施設の常識ではあり得なかったことですが、施主であるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン社のベルナール・アルノー会長は理解を示してくださった」




