
建物は庭を味わうための“付け合せ”

石の美術館外観
隈研吾の仕事を見ていくと、その要所に美術館のプロジェクトがある。栃木県那須町の石の美術館(2000年)や長崎県長崎市出島地区の長崎美術館(05年)など、地域に根ざした建築素材や風土の特性を活かした仕事が高く評価され、数多くの建築賞を受賞している。現在フランスで進行しているプロジェクトも、小さな街で1950年代に造られた倉庫をアート文化センターに再生させるというものだ。いずれもその地ならではの素材や埋もれていた施設に光を当て、再生させるというコンセプトが貫かれている。
「フランスのプロジェクトに至っては、ずばり言って、一見ダメなものを甦らせるという仕事(笑)。でもそれこそがそこに住まう人々の希望であり、美術館という存在の本質だと思う。美術をやる側にしても、もはや自己満足的な空間を作るだけでは社会に受け入れられないという思いが芽生えてきています。街のなかで美術館がどういう存在であるべきか、生活者と美術をやる側、そして僕ら建築家のニーズがピタリと重なったところに、これからの美術館はあるべきだと思う」
石の美術館内観
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石の美術館内観
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2009年にリニューアルオープンする予定の根津美術館本館(東京・青山)も、隈研吾の仕事だ。そこでは特に「庭」と建物の関係に重きを置いていると言う。 「建築を巡る今の時代の空気感をさらに突き詰めていくと、『庭』というキーワードが浮かび上がってくる。極端に言えば、むしろ主役は建物から庭に移りつつある気がしている。建築に庭を取り込むのではなく、庭から建築全体を発想するのです。日本の建築の歴史を紐解いてみれば、かつては庭が主役だったということがよくわかる。例えば江戸時代初期の建築家、小堀遠州(こぼり えんしゅう)は、建築家としてより『庭の作家』として広く知られていますよね。日本人には本来、自然を感じる繊細なセンサーがあって、人工物(建物)は自然を味わうための付け合せだと見る感性をもっているんです」
「今、キャピタル東急ホテル(東京・永田町)のリニューアルに取り組んでいますが、僕としてはホテルの建物より、どうしても庭に関心が向いてしまう(笑)。昨今は外資系の豪華なホテルに注目が集まっていますよね。でも、それらは欧米に行けばあるわけです。日本には日本の現代的なホテルのあり方というものが存在していいはずで、それには“庭からの発想”が大きなヒントを与えてくれる」




