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思い出は「フランスで過ごした時間、すべて」

66公演のうち、劇場を移動することによってオフの日もある。だが、観光にはあまり行かなかったという渡部。車を借りてパリからヴェルサイユへと向かい、穴場のスパでリラックスするのが唯一の楽しみだった。他の舞台は観にいかなかったのだろうか。

「せっかくフランスにいたけど、あまり観なかったですね。でも、アビィニヨン郊外の石切り場で公演されたバルタバスのジンガロ公演は見ました。サーカスでも演劇でもないスペクタクルの中で、優雅に踊る馬と人が戯れ、美しく激しくたおやかな世界を創る。照明も何もないところで、早朝5時から1時間ぐらい行われるパフォーマンスなんですよ。僕は乗馬が好きなんですが、乗馬の技術とは違う。本当にかっこよかったですね」

『FRANCE 172 ATSURO WATABE』
(キネマ旬報社刊)より

フランスでの一番の思い出は?と聞くと、「フランスで過ごした時間、すべてが思い出」と答える。

「決して楽しいことばかりではなかったけど、日本からわざわざ舞台を観にきてくれたファンには力をもらったし、役者以外の人との出会いもたくさんあった。これは財産です」

「僕は純粋に人に会って話すことが好きで、当然だけど人と会話したり、本を読んだり、音楽を聴いたり、何かに触れたりすることは、役者として演技にも影響してくる。何かが蓄積されるというか・・・。僕が演技する上で大切にしたいのは、感受性だと思っていて、それがなかったら演技はできないと思っています。生きているうちにどれだけ色んなことを吸収できるか、それが大切なんじゃないでしょうか」

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