演劇というよりアート
そして、稽古を始めて2カ月後、いよいよロリアンでの初日を迎える。舞台美術は非常にコンテンポラリーなものだ。舞台の両脇には6つほどの変形した穴があり、そこに観客席を階段上に設置している。
「一番前の席と僕との距離は非常に近い。役者の表情を間近で観られるのはおもしろいでしょうね。このような奇想天外な舞台美術も、そしてこんな難解な作品を舞台化できるのも、アートの国フランスだからじゃないかな。そう、演劇というよりアートですよ。日本では学べない世界ですよね」

『FRANCE 172 ATSURO WATABE』
(キネマ旬報社刊)より
「初日は本当に緊張した」という渡部。とにかくセリフを間違えずに無事に演じきったという感じだった。観客も熱心に見てくれて、地元新聞の劇評でも、評判はよかったという。
「セリフを間違えることはなかったけど、芝居としてはまだまだでした。回を重ねても中々芝居は固まらなかったですし。舞台は映像と違って、毎日毎日表現の仕方に変化があらわれます」
「まぁ、完璧な演技ができればベストなんだろうけど、僕のOKの範囲って結構広くて、不完全なものも味があっていいんじゃないのと思ったりするんですよ。本番やリハーサルを合わせると200回以上は同じ芝居をしていて、もちろんいい演技が出来る日もあるんだけど、それはそれで出来すぎな気がしてね」




