
「今、ふつうに見ている風景も、何年かしたらすごく懐かしくなるかもしれないし、取り壊された後で読めば、ある1つの時代の証言、史料的な価値となるかもしれない。例えば、永井荷風が『断腸亭日記』の中で戦前の浅草の景色なんかを書きますよね。戦前の浅草の風景なんて知らないけれど、そういうのを読むとすごく楽しい」
「時代が写っているそんな町の描写が好きです。土地の描写は楽しいですよ」
女性誌の占い記事が運命を変える
石田が小説家を目指したのは7歳のときだった。実際に行動に移したのは、広告制作会社で働いていたころ。雑誌の占い特集が人生を変えた。
「96年の4月、このおひつじ座のところなんですよね」
と言って石田はそのときの女性誌を開いてくれた。
「本当にその通りで、『これから2年間、牡羊座は10月の土星の下に入るので、期日を切ってなにか真剣に自分の中のものを出して仕事をすると良い』。そう言われたら長いもの書くしかないな、コピーの仕事はもう十分だな、と。あんまり苦労のない人生でした。あ、でも、今、苦労しています(笑)」

(11月29日火曜日公開の後編に続く)
※本文敬称略




