(取材・文=山村 基毅 写真=冨永 智子)
今年の春、村上龍は上下巻からなる大作『半島を出よ』を上梓した。北朝鮮のコマンドが福岡ドームを占拠、さらに特殊部隊が来襲して市の中心部を制圧。それに対して日本政府は福岡を封鎖し、反乱軍との戦闘を開始する、という超ハードな内容だ。
かつての『愛と幻想のファシズム』『五分後の世界』といった作品を彷彿させるが、これまで以上に緻密、かつ起伏に富むストーリーであった。
一見、破天荒ともとられる物語にリアリティをもたせるため、膨大な資料を読み込み、取材も行なったことは、巻末の参考文献やあとがきを読めば明らかである。
まさに、こちらが村上のいう「本業」。この小説というジャンルを軸にして話は進んでいった。
「今回は、テーマがテーマだったから、分量も増えたし、視点も鳥瞰的にならざるをえなかったんです。ただ、初めからスケールを大きくしようと思ってたわけじゃないけどね。ああいうモチーフがあって、結果として大きくなったということなんです。とにかく、北朝鮮のコマンドというファクターは、これまでの日本を舞台にした小説の文脈では捉えきれないわけですよ。完全にパラダイムが違う国で生まれ育った概念です。それを、どう物語として織り込んでいくかが、難しいところだった」
「箱根の別荘にこもって書いてたんですけど、一日4000字と決めて書いてましたよ。もっと書こうと思えば書けますけど、無理しちゃうと脳が疲れて次の日使い物にならなくなる。ああいう長い作品は、きちんとペースを守ったほうがいいんです。それと、知人に会うと集中が途切れるので、絶対に誰にも会いませんでした」




