偶然が生んだ、監督・北野武
もはや、揺るぎない世界的地位を確立した映像作家・北野武。森は、“監督・北野武”のデビュー作以来、一貫して北野作品を製作し続けてきた。その森に北野武は、どんな人物に映ったのだろうか?
北野武監督のデビュー作は『その男、凶暴につき』(1989)。当時、お笑い芸人として人気絶頂、確固たる地位を築いていたビートたけしが、映画監督の道を進むことになったのは、意外にも、偶然の産物だったという。
「たけしさんが映画をやることになったきっかけは、本当に単なる偶然だったんです。もともと深作欣二監督で作ろうとしていた作品があったのですが、スケジュールが合わず、監督が降板されることになったんですね。そのときにたけしさんが、『深作監督だからやると言ったものを、他の監督でやるという話はあり得ない』と言い出して、『自分だったら同じスケジュールで撮ることができるんじゃないかなぁ』という、ほんの独り言が、監督・北野武のはじまりです」

1997年、監督・北野武は第7作目の『HANA-BI』でベネチア映画祭グランプリ(金獅子賞)を獲得する(写真提供:オフィス北野)
偶然の産物と言いつつも、翌年には早くも二作目が完成している。その頃は、プロデューサーとしてよりも、いわば“たけし語”の通訳として、たけしの傍らにいた森。すでに彼には、監督・北野武の才能が、手に取るように見えていたようだ。
「デビュー作は亡くなった野沢尚さんが書かれた脚本だったので、彼が書いた設定を継承しながら、北野武の脚本として書き直していったんですが、それは、北野武オリジナルとは言えない。それで、設定やストーリーラインなどすべてをゼロから作ったのが、2作目の『3-4x10月』だった。ここから一気に、北野武完全オリジナル作品へと向かうんですが、現場を見ていれば、それは極めて自然な流れだったと思います」
「実は、このときに私は確信したんです。この監督はホンモノだ、と」
(8月9日公開の後編に続く)




