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「お笑い至上主義」という独自の方法論

笑わせることができる人間にとって、泣かせることは簡単だと、森は語る。

「私はもともと“お笑い至上主義者”なんです。お笑いができれば、何も怖いものはない。“笑わせる”という表現力は、泣かせるとか怒らせるといった表現よりも、難易度が高い。芸のなかでは、最高の表現力だと思っています」

「例えば、ビートたけしの場合もそうです。お笑いで勝負してきた人なので、逆に言葉の無力さをよく知っている。だから、『あの夏、いちばん静かな海。』(91)では、主人公から言葉を奪うことで、映像的な可能性に賭けようとしたんです」

「実は、ツービートの漫才は、極めて映像的でした。田舎を表現するのにイボコロリやボンカレーの看板だとか、すべて映像が浮かぶでしょう? たけしさんは、もともとそういう映像的な世界を言語化してきた人なんです。お笑い芸人というのはおしなべて、タイミングひとつで勝負する。笑いには、間の取り方が必須条件ですから、ストーリーを語るリズム感にも優れています」

「であれば、優れたお笑い芸人は映画を撮れて当たり前なんです。現在、北野武が国際的な映画監督だと評価を受けています。でも私としては、天才的なお笑い芸人だからそれくらいできて当たり前だという思いが強いんです。“笑わせること”と“笑われること”は全く別のもので、そのギリギリのセンスを持っている人間の表現力は、圧倒的です」

出資者に対し、必ず資金回収を約束するという、森のシビアなプロデューサー感覚の背景にあるのは、アーティストでもあり、かつ一流のビジネスマインドを持った北野武のもとで鍛え上げられた、「お笑い至上主義」という独自の方法論である。

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