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華やかで美味なる食は「レストランだけにある」のではない

果たして、精神的、肉体的なストレスと報酬をはかりにかけると、ビジネスという側面からは出張料理はどんなものであろうか。

「割りがいい仕事とはとてもいえません。でも、それを超えて得られる達成感や刺激、そして経験としての財産につながるからこそ続けているのですが」

しかしながらあまりにハードであるため、物理的に週に何回も出張料理をこなすことはできないという。だからこそ、レストランのプロデュース、雑誌やテレビのコーディネイト、レストランの調査などを並列させることで、精神的にも、ビジネス面でも、上手にバランスをとっているのだ。

もっといろいろな食材を見てみたいし、体験もしてみたいとあくまで貪欲な彼女だが「今いちばん興味があるのは、彼らセレブリティの家の厨房で働くお手伝いさんたちの祖国──アフリカ、メキシコなど──の料理を見て、学び、一緒に食べること」と悪戯っぽく笑う。この話一つをとっても、現在のビジネスが、名誉のためでもお金のためでもなく、純粋に内なる興味とパッションにつき動かされ、それを追求してきた結果にほかならないということがよくわかる。5年後、10年後に彼女がどんなスタンスで仕事をしているかはわからないが、柔軟な思考の中で、そのときの夢に向けて邁進していることだけは確かだろう。

“料理を作る"という、一見平面的な仕事にもさまざまな表現方法があり、それが新しいビジネスとして成り立つだけの成熟した食文化が背景にある現代においては、“食を巡る仕事”はますます多様化していくに違いない。華やかで美味なる食は、レストランだけにあるのではない。狐野扶実子という女性は、それを実に鮮やかに、世界へ向けて実証したといえる。

※本文敬称略

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