花を愛でるような風流な趣味はなかった。馬頭に移ってきてからも、畑で自分たちの口に入るような植物(?)は育てたことはあるが、花を植えたことはなかった。道端や山肌にひっそりと咲いている山野草にも、あまり目がいく方ではない。正直に言えば、やはり口に入る山菜やキノコに目が止まる(見つけられればだが)。
見つけられない花
食い意地が張っているのか、美的感覚が鈍いのか……。だから、田舎に暮らすようになっても、花の名前は覚えていない。家内は押し花を趣味にしているので、ひたすら花、特に山野草の知識は増えている。
「あなたは、山にいるのに、木の名前も、花の名前もちっとも覚えていないでしょ」と軽く侮蔑の眼差しを向けてくる。
「食えないものを覚えても仕方ないだろう」とは、恐くて言えないので、ひたすら恐縮のふりをして誤魔化している。
それでも、薄茶色に染まっていた冬枯れの景色の中に、少しずつ色とりどりの花を見つけるのは楽しい。わが家の庭というか、雑草に覆われる前の敷地のあちこちに、知らぬ間に花が咲いている。
土手に、アマナが咲いていた。まるで自分で見つけたような言い方だが、私あたりが見渡しても見つけられない。「そこに咲いてるでしょ」と指差されても、見つけられない。地元の人は10メートルくらい離れていても直ぐに分かるが、私は近くまで寄って花を直接教えてもらわないと発見できない。情けない限りだが、今もってそういう状況である。

これがアマナ。もう少し開くと押し花に最適だ




