都会から馬頭に遊びに来る知人たちは、よく「空気がうまい」とか「水がおいしい」とか口にする。
確かに、私も東京に行くとよどんだ空気のなかで深呼吸するのをためらう。息子などは、はっきりと「東京の空気はくさいよ。気持ち悪い」と言って、行きたがらない。
家内がショックを受けたこと

鷲子山上神社の本殿脇には、ご神木の千年杉が
きれいな空気と水を享受できるのは、田舎に住む者の特権である。馬頭に家を建てるに当たって、家内は大工の棟梁に、こう尋ねた。
「ところで、浄水器はどうするのかしら?」
棟梁は怪訝な顔をして、「このあたりで、浄水器を使っているような家はねえなあ」と答えていた。
わが家の周辺には、矢又川というヤマメの棲む清流や板倉沢という小さな流れがある。水道が引かれたのは昭和64年のことで、それまではこうした河川や井戸を使っていた。
家内と同年輩のお嫁さんたちは、自分の子供のオムツを川で洗っていたという。70~80メートル離れた川まで、汚れたオムツをバケツに入れて運び、そこで洗って帰ってくる。
「行きは、まだいいのさ。そんなに重くないから。帰りは、グッョリと濡れたオムツが重くてねえ。冬場なんか、手首までビッシリとアカギレができたものだったわよ」
自分より若いお母さんにそう言われて、家内はショックを受けたようだった。
今は水道があるので、川でオムツを洗うようなことはない。それでも、沢水や井戸水を使っている家は結構多い。
「水道水はまずくて。とても飲めねえから、まあ、洗濯か風呂に使うくらいだな」ということらしい。




