馬頭町には、3つの美術館がある。
1つは、那珂川の清流を見下ろす小高い丘の上に建つ「いわむらかずお絵本の丘美術館」である。いわむらさんの代表作であるネズミの家族を描いた「14ひきシリーズ」の原画などが展示され、ファンにはたまらない空間となっている。

「いわむらかずお絵本の丘美術館」のエントランス。中には眺めの良いカフェが併設され、子ネズミなどかわいい動物が描かれたキャラクターグッズも販売。
人口1万3000人の町に美術館が3つ
7年ほど前に開館した。優しい里山の風景に囲まれ、美術館を出ると、まるで絵本の世界がそのまま続いているような錯覚に陥る。近くには、「えほんの丘農場」もあって、農業体験会や収穫祭では、子どもたちがたくさん集まってくる。
2つ目は、4年前に作られた「もうひとつの美術館」である。馬頭町の廃校になった小学校の校舎を使った美術館で、主に知的障害者が製作した作品を展示している。
明治・大正期に立てられた木造校舎をそのまま利用し、昔懐かしい雰囲気のなかで、障害者たちの驚くほど高度な作品が並べられる。NPO法人が運営しており、展示会などの活動もボランティアで維持されている。

廃校となった木造校舎を利用した「もう一つの美術館」。ハンディーキャップを持つ人がおりなす独創的な作品の数々が展示されている。
3つ目は、町の中心部にある「馬頭町広重美術館」である。歌川(安藤)広重の浮世絵や版画を展示する目的で作られた。栃木県出身の肥料商であった故・青木藤作氏のコレクションを寄贈してもらい、「浮世絵の美術館」として建設されたものである。
床面積1962平米の横長な平屋建てで、ガラス張りの概観をさらに地元の八溝杉の格子で覆ってある。山側を向いている正面には、奥に広がる森との間に「借景庭」が設けられ、落ち着いた佇まいを見せている。ここを利用して、高級車の広告撮影などもよく行われている。有名な建築家の隈研吾氏の設計によるものだ。
紫外線に弱い浮世絵の特性を考えて、照明には光ファイバーや樹脂系光伝送パイプなどの最新技術が取り入れられている。このあたりの設備は、日本有数だそうだ。
2000年11月に開館。今年9月23日から10月23日までと、10月27日から11月27日まで、2回に分けて開館5周年記念特別展として「広重画業展」が開かれる。
山の中で交通も不便な人口わずか1万3000人の町に、このように特徴のある美術館が3つもあるというのは、ほとんど「奇跡」であろう。美術館というものは、ビジネスとしてみれば儲からないどころか、赤字経営というのが常識だからである。




