耐震偽装事件で失われた建築行政への信頼を回復し、建築物の安全性を確保するための建築基準法などの改正が、6月20日に施行されます。今回の改正は、これまで“性善説”のを前提としていた構造設計に対するチェックを“性悪説”に転換するとも言われるほど大幅な内容です。新法への対応を控えたマンション業界の現状も含め、現時点で期待される効果と問題点を探ってみましょう。
構造基準の厳格化でデザイン面には制約も
改正法の最大のポイントは、構造に関する基準が厳しくなることと、第3者の専門家による構造計算の「ダブルチェック(ピアチェック)」が導入されることです。
構造基準については建築基準法の20条で建築物を規模に応じて4つの区分に分け、それぞれの構造方法と基準を政令や告示で細かく規定しています。これまでは設計者の判断に任せていた部分を細かく規定することで、偽装や違反を防ごうという狙いです。
こうした規制の強化については、マンションの設計担当者などからは積極的に評価する声はあまり聞こえません。自分たちの仕事に対する足かせが増えるのですから、無理もないでしょう。それでも建物の安全性が高まるなら購入者側としてはありがたいことかもしれませんが、設計者からは「建物のデザインも制約される」という指摘が挙がっています。特に窓の形状や大きさが制約を受けるケースが増えると予測されており、居住性にも影響しかねない状況です。
構造計算のダブルチェックで審査期間は長期化
構造計算のダブルチェックは、より直接的に偽装を防止するために新設される制度です。都道府県または知事が指定する構造計算適合性判定機関という第3者機関が、建築確認の際に判定を行います。判定が義務づけられるのは高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物などです。20mというとマンションの場合は6階建て前後ですが、20m以下でも判定が必要なケースは多く、「ほとんどのマンションが判定を受けることになる」とも言われています。

構造計算適合性判定機関では構造の専門家である構造計算適合性判定員が構造計算書をチェックします。判定員はまったくの新設資格なので、人員の確保が急務です。なにしろ改正法が公布されたのが昨年6月21日なので、国では今年3月と4月に無料の講習会を全国で実施し、演習によって判定員の選抜を行いました。その結果、合格者は1561名となり、当初必要と言われた1500名を確保できたことになります。
判定員の確保にメドはついたものの、構造基準の厳格化やピアチェックの導入によって確認申請の審査期間は必然的に長くならざるを得ません。申請から建築確認済証の交付までの法定期限も、現行の21日から35日に延び、延長期限の35日と合わせると最長で70日かかることになります。
また、これまでは確認申請後の設計変更も認められるケースが多かったのですが、法改正後は原則として認められなくなります。そのため設計段階での書類作成に時間がかかるようになると見られており、企画段階から着工までの期間が全体として長くなりそうです。設計に時間をかけることは安全面では望ましいことだと言えますが、コストアップ要因につながることは否めません。




