パネライは、大戦中のイタリア海軍向けの時計を提供していたメーカーで、世界で初めてダイバーズウォッチを作ったメーカーとしても有名である。その大振りでころんとしたケースは、遠くからでも人目を引く。独特の存在感から、一種のファッションウォッチと見なされてきたパネライだが、これほど大きな誤解もない。パネライは、実に真面目な時計メーカーであり、その姿勢は、エントリークラスの「入門編」によく表れている。
(文=広田雅将 監修=プライヴ編集部)
パネリスティ以外も手に取ってみてほしい
時計というのは、年間数万本(あるいは数千本)売れれば、十分ペイする。つまり一握りの熱狂的なファンが毎年買い続けてくれれば、会社は成り立ってしまうのだ。と考えれば、「伝説」を深掘りする一方、限定品をリリースし続けたパネライのやりかたは、そういった熱狂的なファンをターゲットとした、極めて賢いマーケティング手法だった、といえそうだ。
パネライがどう考えたかはさておき、結果としては100%そうだ。加えて、すべての限定モデルは、愛好家の心をくすぐる要素に満ちていた。世界各地に「パネリスティ(パネライの熱狂的なファン)」が登場したのも、むべなるかな、だ。
ただし、僕は大きな考え違いをしていたらしい。あるいは、パネライの遠謀深慮を理解できなかった、というべきか。ここ数年のプロダクトが証するように、今のパネライは実に良い時計を作っている。熱狂的なファンでなくとも、手に取る価値はある。今思うに、「伝説」作りや、巧みなマーケティングとは、ひょっとして、ここに至るための助走にすぎなかったのではないか。
で、考え違いの理由を述べるために、少し遠回りしたい。
1936年のオリジナル・パネライ。ロレックスから供給されたムーブメントとケースを使用していた。素材や精度は比較にならないほど良くなったが、基本的な意匠は現行の「ラジオミール」とまったく同じだ。なおパネライを装着したイタリア軍の特殊潜水部隊は、イタリア軍が地中海の制海権を失った1941年以降、大きな戦果を挙げた







