ユーザーとメーカーによる納車の儀式
世界に不況の風が吹き荒れるなかで、環境技術への注目はかえって高まっている。今までと同じ自動車の価値を追求してもユーザーは戻ってこないから、この危機を乗り越えることはできないだろうと考える人も少なくない。折しもアメリカではオバマ大統領が提唱する「グリーン・ニューディール政策」が話題となり、アメリカの自動車産業も本気で電気自動車やハイブリッド車を開発することになった。
今年1月に行われたデトロイトショーで、アメリカの自動車産業の応援団のように力強く振る舞ったドイツの自動車メーカーは(連載第52回参照)、 どのような「グリーン・ニューディール」を考えているのだろうか。先日行われたフォルクスワーゲン(VW)の環境ワークショップの模様を中心に、欧州メーカーの動向をレポートすることにしよう。
厳しい寒さで知られる2月の北ドイツ。ドイツの商業の中心地であるフランクフルトから、短時間のフライトでハノーバーに着く。ここはニーダーザクセン州の首都であり、歴史も古い町だ。そこから陸路でVWの本拠地、ウォルフスブルクに移動する。
ウォルフスブルクはトヨタ自動車のお膝元である愛知県豊田市のように、「VW社の街」として知られている。街の名前は「狼の城」という意味だが、実際はそんな怖いイメージではなく、「自動車の街(アウトシュタット)」の愛称で親しまれている。
ここには2000年に、その名も「アウトシュタット」という、VWグループのテーマパークがオープンした。VWグループを構成する様々なブランドが一目で分かるような自動車の街のシンボルである。子供も愉しめる自動車博物館や、超高級ホテル「リッツカールトン」がVWユーザーの訪問を持っている。
ドイツでは新車を買ったユーザーが工場まで直接取りに来る制度の人気が高い。VWオーナーは新車のナンバープレートを地元から持ち込み、簡単なセレモニーを済ませてから納車式に臨む。まさにユーザーとメーカーが一体となった納車儀式なのだ。このアウトシュタットはその儀式の場として、大きな役割を果たしている。

ウォルフスブルクは「VW社の街」として知られる




