コーヒーを抽出したあとの搾りかすと
ペーパーカップでさっそく実験
トムは、以前、コンペの入賞作品の中に生分解性(微生物などによって分解される)のゴルフティーがあったことを思い出していた。ゴルフコースのラフに飛んでいってしまっても、自然に分解されてグリーンの肥料になるというそのティーの原料は、確かコーヒー粉のかすを固めたものだった。
なるほど、コーヒーショップで次々に消費され、捨てられるコーヒー粉のかすが、何かの材料になれば面白い。問題は、どうやって固めて形を作るかだ。そういえば、ペーパーカップのリサイクルに当たって邪魔になるというプラスチックシートの材料は何だろう? それを集めて溶かしてやれば、コーヒー粉を成形するときのバインダー(結合材)として使えるのではないか――?
思い付くとやってみなければ気が済まないのは、米国人に共通する気質であろう。トムもまた、例外ではなかった。
トムはまず、近くのコーヒーショップに飛んで行った。店員に頼んで、蒸気でエスプレッソを抽出した後の、細かくひかれて比較的、乾いたコーヒー粉を分けてもらう。それから、ペーパーカップも一緒に。そうして家に帰ると早速、実験に取り掛かった。
ペーパーカップを鍋の中でぐつぐつ煮てやると、話に聞いていた通り、薄い膜のようなものがはがれてくる。その素材がPP(ポリプロピレン)であることは既に調べて分かっている。コーヒー粉のほうは、エスプレッソの粉といえども若干、湿っているから十分に乾燥させなければならない。
少しでも早く試してみたい。トムははやる気持ちを抑え切れず、バーバラが留守だったのを狙って、彼女が大切にしている料理用のオーブンを内緒で使うことにした。ところが、そのせいでキッチン中がコーヒーの匂いで一杯になってしまい、帰宅したバーバラからさんざん叱られてしまった――というのが、冒頭の“ちょっとした言い争い”の顛末である。








