自然素材をぜいたくに用いた
環境と五感にやさしい家

住環境ジャーナリスト 中野 博氏
中野氏がエコハウスを建て、それまで住んでいたマンションから移り住んだのは2000年のこと。住環境ジャーナリストとして、ドイツやスウェーデンといった環境先進国をはじめとする欧米の住宅を研究し、学んだことを踏まえた家であり、自身の考えるエコハウスの実践・研究の場という意図があったという。
そんな中野氏の自宅にお邪魔すると、家全体に“木”をふんだんに用いているのに目を奪われる。木以外でも壁は土の塗り壁と、徹底して自然素材にこだわっているのだ。
「木を建材に用いる場合は、よく乾燥しているものでないといけません。樹齢でいうと80年、90年ぐらいのもので、ゆっくりと寝かして自然乾燥したものを指定しました。木は経年による見た目の変化が面白くて、実際うちの木も随分変わりましたよ。最初は本当に白木だったのが、飴色や茶褐色に変化して。この先さらに変わっていくんでしょうね。柱に使っているのはヒノキで、ところどころに節目が出ているものを使っています。この方が無地のヒノキを使うよりも安いんですよ。壁は土の塗り壁で、内壁、外壁全部塗り直しができるようになっています。子供たちが自分たちで塗り直しができるように、という思いもあったので」
温かみのある見た目や、肌触りの良さ、香りはまさに自然素材にしか出せない味わい。中野氏の家でそんな素材に囲まれていると、何とも心癒される感覚を覚える。 「子供たちは、春夏は素足で過ごしています。あと、今は木の家って珍しいから、子供の友達が来たらみんなビックリしてますね。それでさらにたくさん友達を連れてきて、家の中で遊ぶので、えらいことになる(笑)」
我々が普段「肌着」を買う時は、デザインや価格以上に“着心地”を重視するように、自分が長年暮らす家の建材は、コストや施工のし易さ以上に“住み心地”を重視すべきだと中野氏は著書でも述べている。また特に天然の木は、住宅のほとんどの場所に使える素材であり、さらに「加工・生産におけるエネルギー使用量が少ない」、「仕上げやすいので建築工事上のエネルギー使用量が少ない」、「断熱・蓄熱性能に優れている」、「再利用が可能」、「廃材となっても燃やすことができ、土に還る」といった、環境面でのメリットも非常に大きい。そんな天然木の使用は内部の柱だけでなく、お風呂場や洗面所などの水周り、窓枠、外のベランダの囲みなど、様々な場所に及ぶ。ただし水周りでの使用には、少々覚悟が必要だと中野氏は話す。
「水周りについては、やはり7年ぐらいたつと腐ってきましたね。換気をしっかりしておけば大丈夫だろうと思っていたのですが…。あとやはり子供がいるので、洗面台はビシャビシャに濡れたままで放置されることも多かったことも理由の1つです。とにかく、水周りで木の使用を考えている人は、ある程度“腐るかもしれない”ということは心に留めておいた方がいいかもしれないですね。うちは次のリフォームでは御影石に変える予定です」

ベランダ部分にも天然木を使用




