変わりゆくNYの精肉工場街での
あるアーティスト/建築家との出会い

LOT/EKのオフィスの入口。まるで街にまぎれるように存在していた。探すのにひと苦労。
今回のコラムのタイトル、「M.P.D.」とは、Meat Packing District の頭文字。NYのウエストリバー沿い、14th St、8th Ave付近のエリアを指す。僕は2002年の夏から何度かそこを訪れ、その度に激しく変化する街の風景に驚き続けている。最初に行ったとき、そこ一帯は正直、肉臭かった。その名の通り、M.P.D.は精肉工場が集まったエリアであり、NYの“裏の台所”だった。巨大なトラックが行き交い、つなぎのゴムズボンを履いた、いかつい男たちが闊歩する以外、殺風景で歩いていることが怖かったのを覚えている。ただよく見るとポツリポツリと、その場にはおよそ似合わないようなショップが出現し始めていた。「butcher accessories」(肉屋のアクセサリー)という看板を掲げる小さなアクセサリーショップ、アレクサンダー・マックイーンの最新ショップ……、むせかえる臭いと肉塊がぶらさがる冷蔵庫のなかに、こういった店があるのはかなり不思議な風景だった。しかし現在、そこにはたくさんのレストランやギャラリー、デザインホテルが並ぶ、NYでも代表的なヒップな場所になっている。
そもそも最初に、なぜそこに行くことになったかというと、取材でMoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターに「今後、面白くなりそうなエリアを教えて欲しい」と訪ねた時、M.P.D. のことを教えてもらったのがきかっけだった。さらにそこに、LOT/EKという面白いアーティスト兼建築家がいるから訪ねるといい、と住所を教えてくれた。
LOT/EKのアトリエを発見することは、かなり難しかった。地図で指定された周辺には、およそアトリエっぽい建物はない。あるのは精肉所や倉庫ばかり。探し回り、やっと目立たない看板を見つけた。

M.P.D.にできたギャラリー。LOT/EKがデザインを手掛けた。 空間のなかにコンテナがゴロゴロと転がっている。





