新しいシステムに対する
イギリス人の柔軟さを実感
ロンドンに1週間行ってきた。
滞在中、ポンド高には苦労した。地下鉄の初乗りが約600円、タバコが約1800円――日本円に換算するとそんな金額になってしまう。ロンドンで生活している人にとっては、“1ポンド=100円強”というイメージらしいが、観光客にはキツい数字だった。
今回の旅は、秋に僕の事務所にワークショップでやってくるロンドン大学バートレット校の担当教官との打ち合わせ、そしてロンドン郊外の田園都市を視察するためだった。それはレッチワースという街で、ロンドンの中心部からは車で1時間程度。世界中の様々な郊外都市のモデルとなった街だ。そこは100年前につくられ、今でも美しい環境を保ち続けている。その風景と街を運営する方法を、直接見て確認したかった。

レッチワースの玄関口。小さな郊外の駅、といったところ。
その前に、イギリスという国を感じさせる興味深い法律に出くわした。
その法律とは「コンジェッション・チャージ」。“コンジェッション”とは混雑という意味で、ロンドン市は慢性的な交通渋滞対策として2003年よりこの法律を施行した。ロンドンの都心部では、朝7時から夕方17時の間、車で都心部に入る際に混雑税を払わなければならない。もちろん、これを払わずに進入すると罰金が科せられる。驚愕するのはその課税額で、1日8ポンド。もしこれが東京で行われたとするならば、1日約2000円を払わなければ都心に車で入れない、ということになるわけだ。日本ではおよそ実現されそうにもない気がする。さらに今年、その対象範囲は2倍に拡張された。それはロンドン市民が、このコンジェッション・チャージを積極的に受け止めたということの証でもある。
ロンドンに住む友人に聞いてみると、この法律によって確かに都心の渋滞はずいぶん緩和されたらしい。空気も目に見えて綺麗になったような気がする、と言っていたので、都心の環境は総合的に改善されたようだ。ヨーロッパ諸国は切迫する温暖化や異常気象に対してアジア諸国よりも敏感に反応しているので、危機意識も働いているのだろう。しかしそれだけでは、この法律はなかなか実行に移せないのでは? 日本人の感覚からは素直にそう思えた。
このことについてロンドンに住む数人の友人に尋ねたところ、「イギリスという国が新しいシステムに対して柔軟で、また歴史的にそれをつくり、世界に流布してきたという自負が働いているのではないか」という答えが返ってきた。例えば保険制度もイギリスのロイズ保険機構が発祥。『国富論』を著して現代経済学の基礎を築いたアダム・スミスもスコットランド人。最近ではPFI(Private Finance Initiative)など都市インフラを民間のノウハウや資金を使って整備する手法も、サッチャー政権下のイギリスで初めて試され、現在世界中で実行されている。確かにこういったプラグマティックな社会システムはしばしばイギリスから生まれている。
コンジェッション・チャージが大規模に実施されているのはまだロンドンだけだが、今後、環境問題が深刻になるなか、世界の主要都市に拡大を見せる可能性もあるだろう。





