今ここにあることがすべて

これまで、ひたむきな青年から悪役、コミカルな役どころまで、多彩な役柄を演じ分けてきた上川。「自分はこういう役者」「役者として目指すところ」を言語化することは、自分を限定してしまうことになるのであまり好きではない、という。だが一つ一つの質問に丹念に、的確な言葉を探しながら答える様に、役者として、人としての彼の在りようがそこはかとなく、透けて見えた。

「『ウーマン・イン・ブラック』をやってみて強く感じたのが、『これが僕にとってのお芝居の最小単位だ』という事。芝居は誰かとやるものであって、その最小単位である二人芝居を体験してみると、こんなに濃密で楽しいと思い知らされました。同時に、僕には相手がいない空間、つまり一人芝居は考えられないと感じました。

自己表現としての演技、ですか?そういう部分、僕は全く求めていません。むしろ、上川隆也の氏素性を芝居に持ち込む必要は全く感じない。では、なぜ芝居をやっているのかというと、それは単純に、芝居が楽しいから。

キャラメルボックスに入ってからずっと、楽しいという思いは今も続いています。結局、その一点に収束するんですよね。そういう自分が今、ここにある事。それが全てです」

(7月10〜13日 大阪、15〜16日 広島、18~19日 名古屋、22〜23日 札幌、26日 福岡、30日 仙台、8月2~3日 新潟、9月9〜13日 ロンドンにて公演)

松島 まり乃(まつしま・まりの)

シアタージャーナリスト、旅行作家

東京生まれ、慶應義塾大学文学部卒。出版社に入社、女性ファッション誌の編集者を経て、フリーランスに。執筆、編集のほかシンポジウムやイベントの司会なども手掛ける。著書に『アイルランド民話紀行』(集英社新書)など。

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