Special Interview 小六禮次郎

2007年12月10日

作曲・編曲家として、数々の映画音楽、テレビドラマの音楽を手掛ける小六禮次郎氏。仕事に没頭した20代半ばからの10年間は、オフタイムを楽しむゆとりもなく過ぎていったという。そんな小六氏のライフスタイルを変えたのが、北海道・別海町との出会いだった。別海町に別荘を構えて14年。現在では1年のうちに5カ月も過ごすことがあるほどこの地での暮らしに溶け込んでいるという。小六氏に、これまでの活動と北海道での暮らしの魅力をうかがった。

2人の師の元で音楽を創る楽しさを知る

仕事一辺倒で、スポーツなどを楽しむこともなかったという小六氏。北海道を訪れるようになった30代後半から、身体を動かすことの喜びを知り、現在ではアウトドアで過ごす時間が多くなった。

岡山県岡山市で生まれた小六禮次郎氏。子どもの頃、兄が買ってきた1枚のレコードが音楽への目覚めを与えてくれたという。
「ドボルザークのレコードでした。朝から晩まで夢中で聴いていました。このレコードが音楽の楽しさを教えてくれて、そこから楽器に興味を持つようになったのです」と振り返る。

鼓笛隊に入り、笛を吹いて先生にほめられる。中学校ではブラスバンドに入り、トランペットを吹く。さらに子どものオーケストラが結成されると、そこに加入し、オーボエを演奏するようになるなど、小六氏の音楽に対する興味は日ましに深くなっていった。

高校時代は、吹奏楽部で楽器の演奏に夢中になった。それと並行して先輩たちと結成したジャズバンドでも演奏していた。
「高校1年生の頃、このジャズバンドで演奏したい曲の譜面を、レコードを聞きながら書き起こしていました。そうすることで曲の作り方などを自然に学んでいくことができ、音楽がさらに楽しくなった。卒業する頃には、作曲家として音楽の道へ進もうと決めていましたね」

高校2年生の頃から音楽大学へ進学するための受験勉強を始めた。
「単に聞くだけではなく、演奏することで音楽の違う魅力に触れることができました。それがこの道へ進む大きな要因になったと思いますが、同時に自分は演奏家には向かないと感じさせることにもなりました」

優れた演奏家とは、反復練習を繰り返し、無意識のうちに指が動き、呼吸ができる人。小六氏のように、体を動かす前に頭で考えてしまうタイプはある程度まではうまくいくが、それ以上の演奏家にはなれないと考えたという。そして、演奏以上に、音楽を創ることに魅力を覚えてしまったのである。
「音楽を聴きながら譜面をコピーするうちに、バンドに合わせて無意識のうちに編曲をしていた。それならきちんと作曲の勉強をしたいと考えたのです」

その後、1年間の浪人生活を経て、東京藝術大学音楽学部作曲科へ進学。卒業後は大学院への進学を目指すも受験には失敗した。
「もう3年親のすねをかじりたかったのですが、そういうわけにもいきませんでした(笑)。とはいえ、在学中から教授が評価するような作品とはまったく方向性の異なる曲を創っていましたから、自分でも試験に通るとは思っていなかったんです」

学生の頃から、目指す方向性は現在と同じものだったという小六氏。作曲から離れ、サラリーマンや学校の教師になるつもりもなく、卒業後しばらくは、ピアノ演奏の技術を活かしてクラブやホテルのラウンジでアルバイト生活を送った。
「今でいうフリーターですね(笑)。そんな時、先輩で作曲家の川口真さんの紹介で、服部克久さん、すぎやまこういちさんのアシスタントとして事務所に入ることになり、そこで2年ほど働きました」

この2年間で、学校では学べなかったプロの作曲家による音楽の創り方を学んだ。仕事の内容は、譜面の下書き。テレビの音楽番組のため、オーケストラ用の譜面、”ハコ書き“を書く。
「歌のメロディーとなる主旋律やそれに付随する和音、ピアノとベースとギターとドラムスのリズムセクションなどは、わかりきっているものなので先生が書く必要はありません。そういったパートの譜面を私たちアシスタントが書き、先生に確認していただく。先生は、弦楽器や管楽器などの譜面を書くというスタイルでした。この下書きがとても勉強になりました。服部さんとすぎやまさんでは同じ音楽であっても表現方法がまったく違う。その違いを、それまでの学問では得られない現場のものとして知り、覚えられたことは大きな財産になりました」

下書きする曲数は一晩で20曲ほど。師である服部氏、すぎやま氏の下で経験したこうした時間が現在の小六氏の活動の原点になっているといえるだろう。

北海道・別海町に構えた別荘。建物の周りには、家の中から眺める風景の変化を楽しむため、小六氏自ら樹木を植えた。

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