クルーズ中、船は我が家

客船の旅の一番の利点は、船に居ながらにして次の観光地へと運んでくれること。当初は寄港地で行われるゴルフやダイビングを楽しむことが、船旅の醍醐味だとばかり思っていました。しかし意外なことに、ほんの1日、2日と船で暮らすうちに、寄港地での観光やアクティビティの途中で「早く船に帰りたい」と思うようになっていたのです。旅先で慣れないレストランに入ってご飯を食べるより、「早く船内の美味しいレストランに行きたい」「ルームサービスを頼んでゆっくりしたい」「デッキのプールサイドに行って、ハンバーガーを食べたい」。そんなふうに考えるようになっていったのです。あらゆることは船の中で事足りてしまいます。何よりも船に帰ると落ち着くのです。しかも、船の中の食事は、すべて旅費に組み込まれています。例えば、メインダイニングでキャビアを10皿も20皿もおかわりしても、追加料金は一切取られないのです。もちろんそんなことを実際にする人はいませんよ。紳士淑女の集まりですから(笑)。

客船というのは、ゲストのことを徹底的に喜ばせる最高のシステムが出来上がっています。とにかく、ゲストのありとあらゆるニーズに応えてくれるのです。ホテルなら、出入りする人が必ずしも全員宿泊客とは限りません。ホテルのスタッフは、すべての人に心から「いってらっしゃいませ」と言うわけではないでしょう。でも、船では、そこに乗り込んだ全員がゲストですから、スタッフは徹底的にサービスし尽くしてくれます。だから、船の旅が初めてで、勝手がわからなくてオドオドしてしまう心配はまったくいりません。

部屋には執事もついていて、何か欲しいものがあったら、頼めばすぐに持ってきてくれる。聞けば何でも教えてくれる。乗客はクルーズ中、船にパスポートまで渡してしまうわけですから、旅先でパスポートを失くす心配すらしなくていい。スタッフに全面的な信頼をおいて、すべてのことを任せてしまう。掃除も洗濯も自分自身の所持品の管理も、旅のすべての義務を放棄して、自分の面倒の一切を他人にみてもらうわけですから、こんなに楽なことはありません。船の中はスタッフとゲストの全面的な信頼関係で成り立っている、まさにアットホームな空間です。クルーズ中は、船が我が家なのです。

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