『ザ・ジョーカー』など、Barを舞台にした作品を多く手がける作家の大沢在昌氏。大の酒好きとして有名な大沢氏は昨年、日本推理作家協会の作家陣が毎年集まって、ウイスキーのブレンドに挑戦するイベント「シングルモルト&ミステリー」で優勝した。更にそのウイスキーはサントリーで商品化され、わずか2カ月で売切れてしまうほどの好評を博した。今回は、酒への造詣が深い直木賞作家の大沢在昌氏にBarでの時間の過ごし方や理想のBarについて聞いた。
Barは大人にランクアップする場所

Barは男の子が男の人に、女の子が女の人になることを求められる場所だと思う。特に女性が一人、Barで飲めるようになったらホンモノの女性だと思うな。大人の酒の飲み方ができないとBarで飲むというのはなかなか難しいことだと思うからね。
今の人は・・・という言い方をするとすごくオヤジ臭いけれど(笑)、あまり背伸びをしたがらない人が多いね。特に20代、30代の人。それがかっこ悪いことのように思えてしまうのかな。人間は場数を踏むことで成長すると思う。形から入っても良いし、とにかく場数を踏むことで自分に余裕が生まれ、大人としてレベルアップしていく。逆に40代、50代で初めてBarに行っても、落ち着かないんじゃないかな。場数を踏まないとできないことというのは沢山あるけれど、Barで酒を飲むこともそういうことのひとつなんだね。

もちろん、若い人が背伸びをしている様子は、周りの大人にはバレバレなのだけれど、それで良いと思う。「やっとるなあ」という感じでね(笑)。私自身も若い時はそういう風にやってきた。
Barに興味を持ったのは、私がまだ作家になって1年目の24、25くらいの時かな。家の近くにすごく良いBarがあってね。来ているお客さんもお店の雰囲気も良くて、こういうBarで常連として扱われたいと思って通うようになった。それほど値段の高いお店でもなかったので、ほとんど毎日のように通ったね。なんとかそこに馴染みたいと思って、そのためにはどうすれば良いのかということを考えた。

でも、どちらかというと“何をするべきか”ということよりは“何をしてはいけないか”ということの方が多かったね。とても勉強になった。酒は、飲むとその人の本性が出るし、「あの人とは飲みたくない」って思われるようではいけない。やはり「あの人と飲みたい」と思われないと。そういうことを繰り返していく内に中身が伴ってくるのだろうと思う。




