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気持ちがいいことに関しては 男も女も関係なく気持ちいい

最近、女性にだけでなく男性に向けたスパやサロンが都内でも増えていますが、僕は当然の傾向だと思うんです。そもそも今まで“男”と“女”というところで区別をして、辻褄を合わせようとしていたこと自体が無理やりだったと思うんですよ。気持ちがいいこと、楽しいことに関しては、男も女も関係なく気持ちいいし、楽しいじゃないですか。女の子の中でも「面倒くさいや」って言って短パンにTシャツで昼間からビールを飲んでいるのが好きっていう子はオヤジ化するし、男の子でも体を磨こうとエステに通う子がもっと出てくるでしょう。だから、体を磨くというサービスも女性だけではなく、男性に対してもあって当然だったはず。男だから女だからっていうのではなくて、その人が生きやすいところで生きていいっていう時代になってきたんじゃないですかね。今後、男女間の壁はもっと越えやすくなるでしょうし、その壁自体なくなっていくんじゃないかと思います。

男性の“植物化”にみる 最近の世の中

実はちょうど、モテない男がエステに通ってなんとかモテるようになるっていうコメディを書いているんです。特別なプログラムを組んで、何人もの教育係をつけて半年とか1年とか時間をかけて学んでいく内容なので、今日体験したものとは少し違いますが。このテーマで小説を書こうと思った背景には、僕が何年か前から最近の男の子について感じていることがあったからです。それは、若い男の子が“植物化”しているなあということ。自分から何かを望むこともなく、壁の花になっている男の子が非常に多い。たとえば、自動車メーカーの人が言いますよね、スポーツカーが売れなくなったって。新しいフェアレディZを買うのは40〜50代なんですよ。若い子たちは一切背伸びをして車を買わない。今の自分に見合った大衆的な車を買うんです。彼女の誕生日にも居酒屋に行く。つまり男の子は無理をしなくなってしまったんです。こんな若者の傾向も世相を反映している気がします。

それから、前に女の子と飲んでいた時にこんな話を聞いたことがあります。男の子とふたりで温泉旅行に行った時に、全然手を出してこない。好きなのかと聞くと好きだと答えるけれど、やっぱり進まないんですって。女の子にリードされるのを男の子は待っているんですね。何だか全体的に今の男性は女性化している気がします。しかも、今どきの強い女の子じゃなくて、三歩後ろを歩く、ひと昔前の日本の女性っていう感じね。

時代の流れですから仕方がないとも思うんですけど、自分の気持ちを押し殺して生きるのは、もったいないなと僕は思うんです。欲望があるなら、それを隠さず自分の生き方で楽しんでほしい。金儲けをしたいならすればいいじゃない。モテたいなら頑張ればいいじゃない。エステできれいになろうと思ったら通えばいい。男も女も生き生きと恋愛をしたり仕事をしたりできる時期ってそんなに長くはないですからね。どちらにしても、それで簡単に幸せになれるほど、人生っていうのは甘くないですけどね。

石田衣良(いしだ・いら)

1960年東京生まれ。

成蹊大学経済学部卒業。広告制作会社を転々とした後、フリーランスのコピーライターに。97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。03年『4TEEN』で第129回直木賞受賞。06年、第13回島清恋愛文学賞受賞。著書に『うつくしい子ども』『波のうえの魔術師』『LAST』『スローグッドバイ』『てのひらの迷路』など多数。最新刊は『REVERSE』。

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