一流のバリスタであり「バール・デルソーレ」を手がける横山千尋さん。黒のタブリエを腰に巻いて現れた姿は、ダンディーで洒落た大人の雰囲気だった。しかしひとたびコーヒーの話になれば、その表情は真剣そのもの。本場イタリアのエスプレッソの美味しさを日本に広めたい、と熱く語る。2度の「日本バリスタチャンピオン」に輝く経歴も持つ横山さんに、コーヒー豆の選び方や美味しいエスプレッソの淹れ方を聞いた。
エスプレッソはグラニュー糖を入れて飲む
エスプレッソ発祥の地イタリアにはブレンドコーヒーがないので、イタリア人は朝から晩までエスプレッソしか飲みません。でも、日本人はエスプレッソに対して「苦い」「濃い」「カフェインが多い」「量が少ない」「量の割に値段が高い」といったネガティブな五大イメージを持っているので、好んで飲む人はまだ少ない。本当のエスプレッソはそんなものではありません。リラクゼーション効果がものすごく高いし、旨味も多い。食事の後に飲むと胃液の分泌を促して消化を助けるし、とにかくいいことづくしです。
エスプレッソは7~8グラムの豆を使い20ccから多くて35cc抽出しますが、通常のドリップコーヒーは10グラムの豆で150cc抽出します。「濃い」「カフェインが多い」などと言われながら、ドリップ式と比べ豆の量は約3分の2だしカフェインの量も少ないんです。また抽出にかける時間が長いほどカフェインが出るので、ドリップ式より瞬時に旨みを出すエスプレッソのほうがカフェインは少ないということになります。
苦さで言えば確かにエスプレッソは苦い。だからイタリアではエスプレッソを飲む際に、小さいティースプーンで1杯から1杯半、グラニュー糖を入れて飲むんです。日本ではエスプレッソは砂糖を入れずに飲むイメージがありますが、たっぷりグラニュー糖を入れるのがイタリア流。イタリア人バリスタは砂糖を入れて初めてエスプレッソが完成すると言うほどです。エスプレッソはカプチーノがでできているので、エスプレッソに抵抗がある方はまずカプチーノから味わってみるといいでしょう。
5種類以上の豆をブレンドしてこそエスプレッソ
「エスプレッソの豆をください」とよく言われますが専用の豆はなく、ドリップのコーヒーでもサイフォンでも使う豆は同じです。
向いている焙煎豆はシティ(深煎り)やフルシティ(極深煎り)、フレンチ(フランス風)です。油が浮くような煎りが強いイタリアン(イタリア風)は避けたほうがいいでしょう。強い圧力をかけるため1種類の豆で飲むとストレートな豆の味しか出ず、エスプレッソ特有の複雑な味わいが楽しめません。一口目にアロマ(香り)がふわっと広がると同時に苦さがきて、二口目にアロマが鼻からすっと抜け、三口目に甘さと苦さのコントラストが口の中で広がる。コーヒー豆の種類が多いほど、その複雑な味わいを楽しめるので、本場イタリアでは5種類以上の豆をブレンドしなければエスプレッソとは呼べないという定義があるほどです。苦味が好き、酸味が好き、甘みが好きなどいろいろな豆をブレンドして、自分の好みにあう味を探す楽しさも味わってください。
豆を選んだらエスプレッソ用にパウダー状の極細挽きにします。細かくしすぎても苦味が強くなるので、抽出の具合を見ながら自分の好みの挽き方を研究しましょう。挽いてしまうと酸化のスピードが早まるので、なるべく豆のまま冷蔵庫や冷凍庫で保存します。ただ、豆は脱臭効果が強く匂いを吸ってしまうので必ず密閉容器に入れて保存すること。酸化を防ぐためにも空気に触れないようにすることが大切です。






