LINEが自転車のシェアリングサービスに参入する。同社は2017年12月20日、シェアサイクル事業を展開するモバイク・ジャパンと資本業務提携を締結したと発表。2018年1月5日にモバイクの株式の取得を完了する予定だ。今後、共同で無料メール・通話アプリ「LINE」を活用したシェアサイクルサービスの提供を始める。国内で7100万人が利用する顧客基盤を基に、利用者拡大を狙う。

 モバイクは現在、専用のスマートフォン向けアプリと連携して利用する必要がある。今回のLINEとの連携によって、アプリすら不要で利用できるようになりそうだ。LINEは2018年の上半期中に、モバイクのサービスをアプリのLINE上から利用できるようにする。LINEはモバイル決済サービスも提供しており、利用登録から決済までを一環してLINE上で完結できるようになる可能性がある。

LINEの出澤剛社長(左)、モバイク創業者のフー・ウェイウェイ氏(右)
LINEの出澤剛社長(左)、モバイク創業者のフー・ウェイウェイ氏(右)

 モバイクは2016年4月に中国・上海でサービスを開始。現在、全世界の200都市以上でサービスを展開しており、会員数は2億人を超え、1日当たりの最大利用回数は3000万回に達している。2017年8月に北海道・札幌でサービスを開始して、日本に参入した。

 既存のモバイクのシェアサイクルサービスは、専用のスマホ向けアプリと連携して利用する。アプリをダウンロード後に、保証金としてクレジットカード払いで3000円を支払う。次にアプリ上の画面に表示した地図から、専用の駐輪場の停車している車体を見つける。車体の2次元コードをアプリのカメラ機能で読み取ると音が鳴り、解錠されて自由に自転車に乗れる。

 自転車は専用の駐輪場であれば、借りた場所とは異なる駐輪場に乗り捨てできる。降車後に施錠された時点で、利用時間に応じて利用料が請求される。利用料は30分100円。

 シェアサイクル市場は参入が相次ぐ分野だ。11月21日には、セブン‐イレブン・ジャパンがソフトバンクグループでシェアサイクルサービス「HELLO CYCLING」を展開するOpenStreet(東京都港区)と協業して、シェアサイクル事業への参入を発表したばかり。2018年度中には全国のセブン‐イレブン1000店舗に駐輪場を設置する方針だ。12月18日には、先行するNTTドコモグループのドコモ・バイクシェアが、ナビタイムジャパンの自転車に特化したナビゲーションアプリ「自転車 NAVITIME」との連携を発表。利便性の向上を狙う。

 シェアリングエコノミー市場は国内でも急速に拡大している。矢野経済研究所は、2016年度の国内シェアリングエコノミー市場規模は503億4000万円だったと発表。2021年には1000億円の大台に乗ると予測する。シェアサイクルもその一翼を担うサービスとして期待が高い。大手流通、携帯電話会社、ネット企業など、業種を超えた競争が激化しそうだ。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)

この記事をいいね!する