いよいよ年末。大掃除の季節がやってきた。掃除グッズを買いに100円ショップを訪れる人も多いだろう。そんななか、SNS、特にインスタグラムを使った“見せる掃除”が流行しそうな予感だ。インスタグラムで掃除グッズ情報を発信する2社に、今年の大掃除のトレンドとおすすめの掃除グッズを聞いた。

キャンドゥは“デコる投稿”でフォロワー数16万人超え

 インスタグラムは、無料の画像共有サービス。投稿する写真のジャンルに関するハッシュタグをつけることで、ほかのユーザーが検索しやすくなる。料理やペット、ファッションに関する投稿が多く、女性ユーザーが多いのも特徴。それに目をつけ、2015年8月に公式アカウントを開設したのが、100円ショップのキャンドゥだ。

 投稿しているのは、主に化粧品やインテリア関連の雑貨。ただ写真を載せるのではなく、パーティーグッズはカップケーキやロールケーキと一緒に写す、キャラクターの巾着の回りにお菓子を散りばめるなど、”デコる投稿”で女性からの支持を集めている。フォロワー数は2016年12月8日時点で16万人を超えた。公式アカウント開設後、10~20代の利用客が増加し、「いいね!」の数が多くついたインテリアやネイル関連商品の売り上げが大きく伸びたという。

 「文字で情報を伝えるフェイスブックやツイッターより、写真一枚で商品の特徴が伝わると考え、インスタグラムを開設した」とキャンドゥ広報の栗田梓未氏。インスタグラム掲載後に売り上げが2倍近く増える商品も多いというが、なかでも大きな反響があったのが、2016年7月に発売された「メラミンおばけスポンジ」だ。

 洗剤を使わずに水だけで汚れが落とせるメラミンスポンジを、おばけの形にしたもの。実用品でありながら見た目がかわいらしいことで、ある程度の売れ行きを見込んでいたが、インスタグラムへの掲載が大きな反響を呼び、予想を上回る売れ行きに。一時的に生産が追いつかないこともあったという。

 メラミンおばけスポンジを購入後にキャンドゥの投稿を真似、デコって投稿するユーザーも続出した。壁に吊るしたり絵の具で色付けしたりと、アレンジはさまざま。特にハロウィンの時期には、パーティーの飾り付けとして使用した写真が多く投稿されていた。また、アレンジして遊ぶだけでなく、本来の目的通り「今からこれで掃除する」とメラミンおばけスポンジの写真とともに掃除への「決意」をアップする人もいた。

掃除グッズなのに「オシャレすぎて汚せない」?

 インスタグラムをきっかけにブレークしそうなもう一つの掃除グッズが、模様付きの「カーペット用強粘着スペアテープ」、通称「コロコロ」だ。コロコロは白無地が一般的だが、キャンドゥではダイヤ柄と紋章のようなシェブロン柄の2種類を用意。インスタグラムに投稿したところ、4000件以上の「いいね!」を集めた。さらに、フォロワーから「コロコロがオシャレになっている」「オシャレすぎて、汚せないかも」といったコメントが寄せられた。実際に掃除に使う人が大半だろうが、床や壁をコロコロのテープでデコるユーザーが、今後は出てくるかもしれない。

「カーペット用強粘着80周 ダイヤ」。ほかにシェブロン柄もある
「カーペット用強粘着80周 ダイヤ」。ほかにシェブロン柄もある

 ほかにも、水玉やストライプ模様のロングタイプのゴム手袋などはインスタグラムに載せたら反響が大きそうだ、と栗田氏は話す。

「ロングゴム手袋 ブラック S」。Mサイズは黒地にストライプ柄
「ロングゴム手袋 ブラック S」。Mサイズは黒地にストライプ柄

インスタで100均掃除グッズの使い方を解説

 一方、かわいらしい掃除グッズばかりでなく「普段の掃除ではなかなか手をつけないサッシなどの隙間や窓に関する商品も12月に入ってから売れている」と栗田氏。重曹を染み込ませたウェットシートや水を入れたペットボトルと組み合わせるサッシブラシなど、機能性が高い商品も多くそろえているが、店頭で見かけても使い方が分からないと購入に結びつかない可能性もある。

 そこで、商品の具体的な使い方をインスタグラムで解説を始めたのが、100円ショップ向けの雑貨を製造する小久保工業所だ。

 同社が100円ショップ各社に卸している商品について、写真と解説付きで紹介。特に12月に入ってからは、ハッシュタグに「大掃除」を加えるなど、ユーザーにとって検索しやすいようにしているという。

小久保工業所がインスタグラムに投稿した画像。商品名や特徴について詳しく解説している
小久保工業所がインスタグラムに投稿した画像。商品名や特徴について詳しく解説している
インスタグラム内で紹介されていた「ペットボトル不織布クリーナー」。水を入れたペットボトルに取り付けると、水道が届かない場所でも水を使った掃除ができる。溝に差し込みやすい薄型
インスタグラム内で紹介されていた「ペットボトル不織布クリーナー」。水を入れたペットボトルに取り付けると、水道が届かない場所でも水を使った掃除ができる。溝に差し込みやすい薄型
「ペットボトルブラシ」は手元のボタンの切り替えで水を出したり止めたりできる。自転車や車のタイヤにも使える
「ペットボトルブラシ」は手元のボタンの切り替えで水を出したり止めたりできる。自転車や車のタイヤにも使える

 「インスタグラムでの解説に力を入れ始めたのは、一般ユーザーが同社の取り扱うセスキ炭酸ソーダについて投稿をしていたのを見かけたことがきっかけ」と広報の大田哲子氏は話す。セスキ炭酸ソーダは、環境に優しいアルカリ系洗剤として数年前から注目され始めた。家庭では主に衣類の汗染み汚れを取る目的や換気扇の掃除に用いられている。小久保工業所はセスキ炭酸ソーダ以外にもクエン酸や重曹を取り扱っているが、それらの商品をまとめて「ナチュラルクリーニング」というハッシュタグ付きで紹介するユーザーが多いことにも注目した。

 「ナチュラルクリーニングの投稿数を調べると1200件以上もあった。さらに掃除は11万件、掃除グッズや掃除記録などの投稿も数多く見つかった」(大田氏)ことから、インスタグラムの口コミで商品が広まっているのではないかと考えたという。

 

人に見せるための「インスタ掃除」がトレンドに?

 大田氏によると、100ショップの商品の中でも調理グッズについては以前から“見せる”傾向にあったといい、同社で取り扱うソーセージを宇宙人の形にする抜き型、ハムを花びらのような形にするカッターなどは、グッズを使って仕上げたお弁当や、パッケージ写真などをインスタグラムに投稿する人が多かったそうだ。たしかに、キャラ弁やデコ弁を投稿するというのは何年も前から定番化している。しかし、掃除というハッシュタグに関する投稿を見ると、掃除前の汚れたキッチン回りなど、あまり他人に見せたくないような写真についての投稿も見られる。このような投稿をする人が増えたのはなぜだろうか。

 それには、今期放送されている『家政夫のミタゾノ』『逃げるは恥だが役に立つ』という、掃除のシーンが効果的に使われているテレビドラマの影響もあるのではないか、と大田氏は指摘する。これら2つのドラマとも、番組のウェブサイト上に掃除のコツについて紹介するコラムを設けている。ドラマで見たテクニックを試して、汚れがどれくらいきれいになったか人にも見せたい、いい商品やネタは誰かに話したいと思う心理が、掃除関連のインスタグラム投稿を増やしているのかもしれない。

 また、インスタグラムを検索して気に入ったものが見つかれば、そのまま店頭に買いに行くだけ済み、買い物時間の短縮にもつながる。毎日忙しい人にとって、掃除の前の準備段階をひと手間と感じるときある。ハッシュタグをうまく使って、今年の大掃除にインスタグラムを活用してみてはいかがだろうか。

(文/樋口可奈子)

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