ここ最近、プレーヤーが実際に盤を囲んで楽しむボードゲームの人気が高まっている。そんななか、2017年12月2日に発売し、わずか1週間足らずで完売したのが、お笑いのツッコミが取り札になった「ツッコミかるた」だ。

2017年12月2日に発売され、あっという間に完売した「ツッコミかるた」(税込み2500円)。手がけたのは5GOATS(ファイブゴーツ)という名前で活動する4人のグループ。現在欠品中で公式サイトにて予約を受け付けている(写真/なかむらしんたろう)
2017年12月2日に発売され、あっという間に完売した「ツッコミかるた」(税込み2500円)。手がけたのは5GOATS(ファイブゴーツ)という名前で活動する4人のグループ。現在欠品中で公式サイトにて予約を受け付けている(写真/なかむらしんたろう)

 ツッコミかるたは表面に「ツッコミ」、裏面に「トークテーマ」が書かれた100枚のカードを使って2チーム(2~8人)で得点を争うゲーム。まず、ツッコミが書かれた面を上にしてカードを20枚、ランダムにテーブルの上に並べる。残りのカードはひとまとめにし、裏面のトークテーマを上にしてテーブルの真ん中に置く。「好きなスポーツ」「ファッションのこだわり」などのトークテーマに沿ってトークを開始し、誰かがボケたら他のプレーヤーがそれに対するツッコミのカードを取るという、シンプルなルールだ。相手チームの「ボケ」に対してツッコんだ場合は1ポイント、味方チームのボケに対してツッコんだ場合は2ポイント。どちらかが10ポイントに達した時点でゲームが終了する。

 つまり、「ボケ」と「ツッコミ」のペアを完成させるという「かるた」。「ツッコミが合っているかの判定が難しいのでは?」と思うだろうが、基本的にボケた人の意図通りであれば正解となる。ただしボケた人の意図と違っていても、ツッコミが的確だったり、笑いが起こったりすれば正解扱いにしてかまわないそうだ。

裏向き(トークテーマ)にした札をテーブルの真ん中に置き、かるたの要領で残りの札を表向きに散りばめて配置(写真/なかむらしんたろう)
裏向き(トークテーマ)にした札をテーブルの真ん中に置き、かるたの要領で残りの札を表向きに散りばめて配置(写真/なかむらしんたろう)
誰かがツッコミ札を取ったらトークテーマの札を裏返してテーブルに置く。これでトークテーマが変わり、新たなボケが生まれる(写真/なかむらしんたろう)
誰かがツッコミ札を取ったらトークテーマの札を裏返してテーブルに置く。これでトークテーマが変わり、新たなボケが生まれる(写真/なかむらしんたろう)

 ツッコミかるたを制作したのは氏田雄介氏、中森源氏、栗林和明氏、小島翔太氏の4人。玩具メーカーではなく、4人が5GOATS(ファイブゴーツ)というグループを組んで発売した商品だ。もともと仕事上の知り合いだった4人はボードゲームで遊ぶために集まるようになったという。2017年12月2~3日に開催された国内最大規模のアナログゲームのイベント「ゲームマーケット」に出品し、同時にSNSで動画を配信。イベントで遊んでいる様子を動画に撮ってアップした人もいて、「面白そう」というツイートが拡散し、ネットショップでは用意した500個が即完売したという。

 一般的に個人がボードゲームを発売する場合は、イベントなどで100個程度売れればヒットと言われている。だがメンバーは「これだけ面白いのだからほしがる人は多いはず」と考え、500個を作成。それでもあっという間に完売したうえ、追加注文が殺到していることに驚いているという。それにしてもなぜ、このシンプルなゲームがこれほど受けているのだろうか。

「ボケとツッコミ」という分かりやすさがウケた

 ゲームを開発したきっかけは、メンバーの1人である中森氏が考案し、発売したJ-POPの歌詞の頻出フレーズを使ったかるた「狩歌」。その面白さに感銘を受けた栗林氏が「こういう面白いゲームを自分たちでも作りたい」と言い出したことだという。

 メンバーの狙いは笑いを通してお互いを理解し合い、親密になれるようなボードゲームを作ること。そこから「ボケに対するツッコミのペアを作る」というゲームの原型となるアイデアができた。

 アイデアが具体化したのは2017年夏。手始めにいくつかのツッコミワードを書いた紙を並べてトークを開始し、小島氏が「ご飯の後のデザートはカレーかな」とボケた瞬間、他の3人が同時に「インド人か!」と叫んで札を取り合った。「全員いっしょにハモってツッコむというのが、すごく楽しくて」(氏田氏)、このかるたなら場が盛り上がることを全員が確信したという。

100枚あるトークテーマカードの一部
100枚あるトークテーマカードの一部

 売れ行きが好調な理由について、小島氏は「誰もが知っている『お笑いのボケとツッコミ』と『かるた』を組み合わせたという分かりやすさではないか」と話す。「ボードゲームはルールが難解なものも多い。それもボードゲームの楽しさの一つではあるが、このかるたは誰もが知っている題材を生かしたのがウケたと考えている」(小島氏)。また、小島氏は「笑いのセンスを磨きたい」という欲求が潜在的にあることも、受けた要因のひとつではないかと話す。

 SNS上では「ツッコミかるた、取り札見ただけで半年分くらい笑った」「ツッコミかるた面白そう。ボケ札も用意してくれるともっと低年齢でもいけそう」という感想のほか、「笑いの勉強として真剣にやりたい」という声も上がっているそうだ。

購入者が自由に遊べるよう、好きなワードが入れられるカードも用意
購入者が自由に遊べるよう、好きなワードが入れられるカードも用意

 とはいえ、なかには「急にボケろと言われてもできない」という人もいるかもしれない。実はメンバーの中森氏もボケが苦手で、トークのときもボケられないことが多いという。そんな人がたびたびツッコんだときのために「ボケろよ!」という取り札も用意されている。「ルールが厳密でないことも、このかるたの良さ」(氏田氏)。

 反響が大きいことから、かるたを使ったさまざまなコラボレーションも検討中だという。「例えば実在の芸人のツッコミを集めたかるたの商品化や、ツッコミかるたで遊ぶ様子を実況するイベント、ツッコミかるたをお笑い芸人にやってもらうネット番組など、さまざまな展開を考えている」(氏田氏)そうだ。

(文/桑原恵美子)

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