東京ハイヤー・タクシー協会(東京都千代田区)が就職活動中の学生(すでに卒業している人も含む)を対象に運賃1000円分が無料になるチケットを配布。このチケットを使えば「就活応援タクシー」のステッカーを貼った東京都内のタクシーに約3km分乗車できる(2017年4月1日から9月30日まで実施。現在は終了)。タクシー乗車時にステッカーを目にした人も多かっただろう。

東京ハイヤータクシー協会が作成した「就活応援タクシー」のポスター。チケットは2017年3月12日から6月1日までに開催されたリクルートキャリア主催の「リクナビ2018」の合同企業説明会で配布
東京ハイヤータクシー協会が作成した「就活応援タクシー」のポスター。チケットは2017年3月12日から6月1日までに開催されたリクルートキャリア主催の「リクナビ2018」の合同企業説明会で配布

 期間中に配布された無料チケットは、合計5780枚。単純計算しても600万円近くかかっている。タクシー協会はなぜこのような取り組みを行ったのだろうか。

「タクシーに乗ったことがない」若者が増加

 同協会の太田祥平広報委員長は「若い世代を中心に『タクシーは高価でぜいたくなもの』というイメージがあるようだ。タクシーに乗ったことがないという人も増加している」と話す。同協会がリクルートの協力を得て就活中の学生を対象に調査したところ、「1、2kmの移動手段は徒歩やバス」と答える人が多く、タクシーを利用するという選択肢がないことが分かった。

 さらに、タクシーもクルマも若い世代にとって身近なものではなくなっていると同協会は分析。「昔と比べて若い世代のお金の使い方が変わってきていると感じている。今はクルマの免許をとらない人が増えている傾向にあるとも聞いた」と同協会の藤原廣彦副会長は語る。そこで、若い世代のタクシー利用のハードルを下げるための戦略として無料チケットの配布に乗り出したという。

 就活生に焦点を当てたのは、これをきっかけに社会人になってから乗車機会を増やしてもらいたいという期待から。チケットは協会の職員が学生に手渡しで配布した。「手間はかかるが、学生の反応を間近で知りたかったのと、手渡しのほうが学生にとってインパクトが強いだろうと考えた」(太田広報委員長)からだという。

Syda Productions / PIXTA(ピクスタ)
Syda Productions / PIXTA(ピクスタ)

利用したことがない人のために「運賃予想マップ」も配布

 実は、無料チケット配布の取り組みは今年で3年目。1年目は事前登録した学生が初乗り無料券を受け取れる仕組みにしたため、思ったほど配布できなかったという。そこで2年目から、リクルートキャリアの合同企業説明会に訪れた就活生に配布するようにした。その結果、「学生側が自らもチケットをもらいに来てくれるようになった。また、これをきっかけにタクシーを使うようになった学生もいるという話も聞いた。就活応援タクシーという名前も定着しつつあるようだ」と太田広報委員長は話す。

 2017年に配布した5780枚のうち、実際に利用されたのは1422枚。チケットを渡した人の約25%が利用したということになる。太田広報委員長は、「2018年以降も実施する予定。10年は続けたい」と意気込む。

 だが、普段タクシーを利用しない人にとっては、1000円でどこまで乗れるのかが分かりにくいという課題もある。そのため、タクシー無料券とともに運賃予想マップを配布しているという。利用者にとってより便利になるよう、マップに掲載するエリアや内容を今後も見直していく予定だ。

現在は東京駅起点の運賃マップしかないが、今後は新宿や品川駅起点のマップも作成する予定とのこと
現在は東京駅起点の運賃マップしかないが、今後は新宿や品川駅起点のマップも作成する予定とのこと

(文/吉成早紀=アバンギャルド)

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