ロングセラーには理由がある。質感であったり、合理性であったり、何ものにも代えがたいそのものだけが持つ本質こそが長く愛される秘訣だろう。最近では、“昭和生まれ”など懐かしい製品やサービスに新たな要素を加えることで価値を進化させて、再びブームを起こしている。そのいくつかを紹介しよう。

【レコード】デジタルにはない存在感で音楽を実感する

 音楽は、今やデジタル音源をダウンロードして聴くのが当たり前。最近では、Apple Musicのように一定の月額料を支払えば、音楽が聴き放題になるサービスも登場している。CDでさえ販売不振が続く中、ここ数年でアナログディスク、いわゆるレコードの人気が再燃しているという。一般社団法人 日本レコード協会の調査によると、レコードの総生産数(邦楽・洋楽の合計)は、2013年度は26万8000枚だったのに対し、2014年度は40万1000枚まで増加した。

 若者世代に人気のバンドやアイドルたちが、CDだけでなくアナログレコードでも新譜をリリースする動きも広がっている。同協会の調べでは、新譜数も2013年度は71タイトル、2014年度は91タイトル。好きなアーティストが出したアナログレコードを聴いたことで、その魅力にはまる、新規のアナログレコードファンも多いようだ。

11月3日は日本レコード協会制定した「レコードの日」だ。今年は東洋化成が主催となり、HMV、ディスクユニオン、TOWER RECORDSなどが集い、『レコードの日』というアナログレコードのリリースラッシュイベントが開催された
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 「アナログレコードの人気再燃は、音楽がデータ化――無形化することに対して、どこか物足りなさを感じている音楽ファンや作り手の反発によるところが強いと感じています」と語るのは、日本で唯一のアナログレコードのプレスメーカー・東洋化成のディスク事業部レコード営業課の萩原直輝さんだ。

 音の良さはもとより、「表面に掘られた溝により音楽が可視化されている、その存在感こそがアナログレコードの魅力では?」と萩原さん。

「懐かしさ」は若者にとっての「新しさ」

 若手のアーティストたちの新譜リリースの波はカセットテープにも広がりつつある。例えば、でんぱ組.incというアイドルグループは、CDに加えてアナログレコード、カセットテープとさまざまな形態で今年2月にアルバムをリリースして話題になった。

 こうした動きについて、「アーティスト本人や製作関係者に、カセットテープの音が好き、おもしろいと考えている方が増えてきているのではないか」と、HMV record shop 渋谷の店長・竹野智博さん。

10月17日にHMV record shop 渋谷で開催された「カセットストアデイ」。新品カセットテープや、中古カセットテープと中古ラジカセの販売、カセット好きアーティストによるトークやインストアライブが行われた。新品カセットテープは発売翌日には品薄になったという
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 竹野さんによれば、同店でカセットテープを手に取る世代は、20~50代と幅広いそうだ。最近ではNIRVANAやOASIS、RADIOHEAD、THE WHITE STRIPESのような1990~2000年代のカセットテープを探す、20代・30代が増えてきたという。

 カセットテープの魅力は「独特な音と見た目、懐かしさ」だ。無形のデジタルデータとしての音楽が主流になった現代では、その懐かしさは、30~40代にはラジオやテレビを録音して聴いていた青春時代を思い出させ、同時に10~20代にとってはユニークで目新しく、魅力あるアイテムに映るのだろう。