「ロハコと組むと商品が売れる」――。インターネット通販サービス「LOHACO」(ロハコ)がオリジナル商品の展開を拡大しようとしている。コラボを希望するメーカーが殺到しているからだ。東京ミッドタウンで2016年10月28日から11月6日まで開催された「暮らしになじむLOHACO展2016」で展示されたオリジナル商品の数々から、その人気の理由を探った。
ロハコでは洗剤や水、トイレットペーパーなどの日用品を多数取り扱っている。1900円以上購入すると送料無料、注文日に即日配送されるといった利便性の高さが、仕事や子育てに忙しい女性のニーズをキャッチ。日用品以外にも、「無印良品」「ディーンアンドデルーカ」など人気専門店の商品や資生堂、花王などの化粧品まで扱い、30~40代女性を中心に支持されている。
そのロハコは2015年から、国内メーカーとコラボレーションし、“ユーザーの日常生活になじむデザイン”をコンセプトにしたオリジナル商品の展開を開始。“コンシューマーブランド(以下、CB)”と名付け、ロハコ限定で販売している。
なかでも2015年2月に発売した花王「リセッシュ 除菌EX ナチュラルストーンデザインボトル」は商品ロゴを強調しないシンプルなデザインが受け、初動10日ではロハコ内での他のリセッシュの合計販売数の12倍を売り上げたという。さらに販売開始から8カ月では、同じリセッシュ 除菌EXシリーズの通常品の7.5倍の売り上げを記録した。
CB商品には既存品のパッケージを変更しただけのものもあれば、商品自体をゼロから作り上げたものも。CBが成功した秘訣はどこにあるのか。ロハコを運営するアスクルの木村美代子CMO(チーフマーケティングオフィサー)に聞いた。
【ポイント1】店頭での見栄え重視からの脱却
木村CMOは、CBについて「メーカー主導がNB、流通主導がPBであるのに対し、お客様主導で消費者目線の商品」と定義する。
売り手の目線で考えると、店頭でいかに目立つかが重視されがちだ。しかし、「ユーザーが欲しいものはもっとシンプルで、インテリアとなじみがよい商品」(木村CMO)。
そう考える背景には、アスクルでのデザイン商品のヒットがあった。北欧のデザイナーとコラボした清掃用品やファイルなどを発売したところ、いくつもの商品がヒット。「ホテルやレストランのお手洗いなどでさりげなく目立つのが受けた」(同)。さらにオフィス向けのアスクルだけでなく、個人向けのロハコでもデザイン商品を扱ってほしいという声が消費者から上がったという。
【ポイント2】メーカーの社内デザイナーの力を生かす
CB商品のもうひとつの特徴は、メーカーの社内デザイナーが中心となってデザインを作り上げていること。社内デザイナーは会社の強みや商品についての理解も深く、上層部への説得力もあるからだ。
デザインにあたってロハコが求めるのは、ユーザー目線で家に置きたいデザインにすることだけ。店頭で目立つ必要がないので、自由度は高い。2016年2月に発売されたキリンビバレッジのブレンド麦茶「moogy(ムーギー)」のロゴは、キリンビバレッジが通常使う赤字ではなく黒字で印字され、商品特徴は手書き風にデザインされている。パッケージのイラストも全部で16種類と豊富だ。
「いくつかのアイデアの中からロハコが希望を出すこともある。だが、最終的に決めるのはメーカー側。社内デザイナーからは『本当に作りたいものが作れた』という声が多い」(木村CMO)
【ポイント3】アウトレットが有償サンプリングの窓口に
PB(プライベードブランド)に代表されるように、流通企業がメーカーと組んでオリジナル商品を作ること自体は珍しいことはでない。しかし、ロハコの取り組みがユニークなのは、アウトレットコーナーを積極的に活用していることにある。
アウトレットでは食品や日用品など、パッケージ変更などによって店頭に出せなくなった商品を通常価格より3割から8割ほど安く販売している。ロハコの中でも最も集客力の高いコーナーだ。そこにパッケージ変更のタイミングで商品を並べることで気軽に試してもらえ、気に入ってもらえれば通常商品の購入につながる。つまり、有償サンプリングの役割を果たしているわけだ。
さらに、「最初はロハコ限定だが、その後は別のところで販売してもらっても構わない。テストマーケティングの形として使ってもらってもいい。いろんな商品を小さく生んで大きく育てるのがロハコの目標」と木村CMOは話す。
展示会に出展された47商品のうち、約30商品が来春までに発売予定。ここで火が付き、ヒット商品に成長する商品が出てくる可能性もありそうだ。
(文/樋口可奈子)