2017年10月11日、高橋書店主催の「第21回手帳大賞」の発表と授賞式が東京・帝国ホテルで開催された。手帳大賞は「商品企画部門」と「名言・格言部門」の2部門があり、商品企画部門に谷口和信氏(神奈川県、会社員)の「PDCA手帳」、名言・格言部門では、浅沼元子氏(北海道、パート)の「人数もおかずのうちだね。」が大賞を受賞した。
谷口氏が提案するPDCA手帳は、仕事の進め方の基本といわれる「PDCAサイクル」を1冊の手帳で分かりやすく管理できる発展型レフト式手帳。PDCAとは、Plan(計画)、Do(行動)、Check(評価・確認)、Action(改善)の頭文字をとった言葉で、P→D→C→Aと巡り、Aからまた次の課題のPに進むというサイクルのこと。これを繰り返すことで継続的に物事を改善していくことが大切だという意味だ。
PDCA手帳の内容は、ウイークリーページの左ページが1日分になっていて上下に分かれ、上段に予定、下段にその実際の行動を記入することで、予定と実際の行動がひと目で比較評価できるという仕組みになっている。さらに、ウイークリーページの右ページはメモ欄になっていて、この予定から見えてくる新たな課題を記入するようになっている。この課題を改善することで効率的な時間の使い方ができるという提案だ。見開きでPDCAがひと目で分かるうえに、記入欄にはグリッドラインが引いてあるので目的に合わせて紙面をカスタマイズできるようになっているという。
毎回、商品企画部門の大賞は商品化を前提としているので、今回受賞したPDCA手帳も今後商品化される予定だ。
名言・格言部門は、日常のふとした会話の中で感心し、思わずメモしたくなった身近な人の名言・格言を募集するもの。今回は、大賞のほかに、5人が受賞した。
■審査員・泉麻人賞
「電池の切れ目が縁の切れ目」鈴木啓公氏
■審査員・椎名誠賞
「ぼくは、あさがおをきびしくそだてる!」藤瀬あづち氏
■審査員・黛まどか賞
「大きな仕事も小さなメモから」川野智弘氏
■優秀賞
「夫婦仲が良いのは耳が遠いおかげ」小野寺貴美子氏、「言葉発電」高橋拓矢氏
“手帳は高橋”の新コンセプトを発表
手帳大賞の授賞式に続いて、高橋書店の新ブランディングの発表も行われた。
ここ数年は空前の手帳ブームで、約7000万冊もの手帳が販売されているのだそうだ。そんななかで高橋書店は手帳市場の40%のシェアを占める手帳のエキスパートといえるが、2016年にはリコールが発生し、63商品を引き上げるという事態に見舞われた。しかし、結果的に売り上げは前年よりもプラスに転じ、「20年以上プラス成長の記録を更新中」(東宏志取締役)なのだそうだ。
高橋書店は2014年から2017年まで「未来がはじまるよ」キャンペーンを行い、広告には落語家の春風亭昇太や高橋みなみなどのタレントを起用、広告に重点を置くなどしてきたが、2018年度からは15年ぶりに手帳のブランディングを新たにし、タレントは一切使わない方針なのだという。
「今年からブランディングを刷新する。広告がひとり歩きするのではなく、社員やお客様を巻き込んで、商品の意義やこだわりを見つめ直し、発信していく」と高橋秀雄社長は話す。ターゲットとするのは学生や新社会人、働く女性とし、新たなブランドコンセプトは「あなたと365日」と発表した。
新しいコンセプトCMは、365日のちょっとした出来事を、一般の人や高橋書店の社員を通じて展開していくというもの。このCMを手がけるのが、ダイコクinc.のクリエイティブディレクター、サトー克也氏。サトー氏は、コスモ石油の「ココロも満タンに宣言」や三井不動産販売の「三井のリハウス」などを手掛けた人物だ。
サトー氏は高橋書店の新たなブランディングについて、「本当の身近な幸せは名もなき人の名もなき日常にある。そんな365日に寄り添い、彩りを加えるのが高橋書店の手帳ということを映像で表現していく」と話す。あえてタレントの起用を辞め、一般の人を出演者にして映像を製作した理由は、「黒澤明監督の映画全盛期はわざわざ映画館に足を運んだ、倉本聡氏の時代は自宅でテレビで見ていた、現在はスマホを持ち歩いて見る時代。映像はどんどんカジュアル化している。高橋書店の手帳はそういう時代を理解して作っていることを感じてもらうため」と解説した。
最後の写真キャプション、初出では「高橋英雄社長」となっておりましたが、正しくは「高橋秀雄社長」でした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。
若者にとってアナログ手帳は新しいツール!?
ネオマーケティングの「若者の消費トレンドに関する調査」によると、今後使用、利用したいものとしてアナログ手帳が72%を占めて第1位になっているという。東取締役は、「新しいものが普及するごとに“デジタルVSアナログ”と言われ続けているが、実際は、“デジタルwithアナログ”になっている。新しいものが普及すればするほど、普遍的な価値が輝き始める。活字文化は廃れないと思っている」と話す。
デジタルツールが氾濫するなかでアナログの手帳は中高年には安心するツールとして、また、若者には新鮮なツールとして捉えられているようだ。
2018年版の高橋書店の手帳は、全部で255点。そのなかで新作は5点。9月上旬に発売した。新作は、手帳判サイズの「アヴァン」(1100円)のブラックとネイビー、人気の高い「ディアクレール」シリーズのA6判サイズ「ディアクレール ライト」(1200円)の紺とダークネイビー、そして、「デスクダイアリー リプレ」(1550円)だ。
アヴァンは月間予定表ブロックと週間レフト式で構成されたビジネス手帳で、デザインはシンプルにして表紙にステッチを施すなど、20~30代の若いビジネスパーソンでも持ちやすいカジュアルな雰囲気に仕上げている。
ディアクレール ライトは装丁に金具やステッチを施した高級感のある作り。月間カレンダー式、96ページのン薄型タイプで、持ち運びしやすいようにコンパクトなA6サイズにしている。
そして、デスクダイアリー リプレは、リピーターから要望が高かったメモスペースをたっぷり設けた自由度の高い大型バーティカルタイプのデスクダイアリーだ。
新作は、顧客からの数万通のアンケートはがきの意見を反映して開発されたもの。高橋書店の調査によると、若者ほど取引先で手帳を使用する場合に気を使っているという。また、働き方改革の浸透によって、手帳は仕事の管理や振り返りを行うツールとして見直されているそうだ。
(文/広瀬敬代)