モバイルバッテリーやUSB急速充電器を中心にパソコン・スマートフォン用周辺機器を製造・販売するAnkerの日本法人、アンカー・ジャパンが2016年9月21日、家電製品ブランド「eufy(ユーフィ)」を発表した。すでに発売済みのコードレス掃除機も含め、今後はeufyブランドに統一する。パソコン・スマホ周辺機器やBluetoothスピーカーなどのデジタルおよびオーディオ機器はAnkerブランドで継続する。
アンカー・ジャパンの井戸義経社長は「アンカーは、主に自宅やオフィスの外での活動、すなわち、モバイルライフをサポートする製品群を提案してきた。それに対して今回発表したeufyブランドは家庭での快適な暮らしをサポートする製品群を提案していく」と話した。
製品カテゴリーは「Cleaning(掃除機)」「Lighting(照明)」「Environment Enhancement(空間環境)」の3つ。それぞれ以下の製品を発表した。
■Cleaning(掃除機)
・ロボット掃除機「Eufy RoboVac 20」
(10月5日発売、直販価格2万9800円)
6700mAhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、最大200分の連続稼働が可能なロボット掃除機。衝突を回避する超音波センサーや落下防止センサー、ゴミがいっぱいになったら知らせてくれるセンサーなどを内蔵。掃除してほしくない場所を指定できる「ソニックウォール」も付属する。自動モードを含めて7つのモードを搭載しており、付属のリモコンでの操作も可能だ。本体の高さは約8cmと低いので、ソファーやベッドの下も掃除しやすい。
■Lighting(照明)
・USB給電機能付きLEDデスクライト「Eufy Lumos E1」
(11月上旬発売、直販価格5980円)
6段階の照度調整と5段階のカラーの調整が可能なLEDデスクライト。スタンド部分とLEDパネルは可動式になっているので、好みに合わせて角度を調整できる。LEDの寿命は約5万時間とのこと。背面に2つのUSB充電ポートを搭載し、スマホやタブレットなどの機器を充電できる。独自の技術「PowerIQ」により、使用する機器に合わせて最適な電流を用いた急速充電が可能という。給電できる電流は2ポート合計最大3Aで、各ポート最大2.4A。
・ベーシックなLEDデスクライト「Eufy Lumos A4」
(10月5日発売、直販価格3480円)
LEDライト部分はLumos E1と同じだが、こちらは充電ポートを搭載していないベーシックなモデルだ。
■Environment Enhancement(空間環境)
・超音波式加湿器「Eufy Humos Air」
(11月上旬発売、直販価格4980円)
4Lのタンクを搭載し、最大約26時間の連続使用が可能な超音波式加湿器。動作音は最大38dB。ミストの出力レベルは3段階で、1時間から8時間まで4段階のオフタイマーも搭載している。アロマディフューザーとしても利用可能だ。
eufyブランド第1弾は期待外れだが……
アンカー・ジャパンの井戸社長は発表会で「ユーザーが真に活動的な人生を送るために、少し後押しになるようなデバイスを作りたいというのが我々の願い」と語っていた。
筆者は、今回発表された製品群を見て「期待外れ」の印象を持った。発表会で少し見て触っただけに過ぎないため、実際の使い勝手や性能については未知数だ。しかし新たな家電ブランドを打ち出して、大手メーカーから中小企業までひしめき合う“レッドオーシャン”(競争の激しい既存市場)に向かう気概が製品群から感じられなかった。
ロボット掃除機は米アイロボットを筆頭に国内メーカーも数多く出しており、中国のEMS(電子機器受託製造メーカー)を利用したと思われる格安ロボット掃除機もさまざまなブランドから販売されている。LEDデスクライトについても同様だ。
加湿器についても、Francfranc(フランフラン)などをはじめとした雑貨店で販売されている、デザイン性を追求した製品と比べるとあまり存在意義が感じられない。
かなり厳しい意見になってしまったが、「お客様の声と真摯(しんし)に向き合い、良い製品を求めやすい価格で提供していくことで新しいブランドを成功に導いていきたい」という井戸社長のコメントには期待が感じられた。性能に関しては未知数ではあるものの、ロボット掃除機「Eufy RoboVac 20」は機能性のわりに安価であることは確かで、LEDデスクライト「Eufy Lumos E1」なども割安感がある(正直、筆者にとって超音波式加湿器の「Eufy Humos Air」は機能面やデザイン面、コストパフォーマンスの面であまり魅力を感じなかったが)。
今回は3つの製品カテゴリーの新製品を発表したが、「これまで培ってきたeコマースの販路と親和性が高く、お客様に対してマーケティングを立てやすい領域に注力して発表したが、今後4つ、5つと拡大する可能性はある」と井戸社長は語っていた。
ユーザーの声をしっかりと聞く
繰り返し言うのは恐縮だが、現状のeufyブランド製品は、OEM(相手先ブランド名製造)メーカーの製品を買い付けて販売する“ジェネリック家電”メーカーとの大きな違いは感じられない。
ただし、井戸社長は「私たちは世界中のお客様の一人ひとりの声に学ぶこと、聞くことを、どのブランドよりも追求したい」と話していた。
「ただ単に中間マージンの中抜きや大量購買によるスケールメリットを生かすだけでは、今までになかった価値を提供することはできない。eコマースだからこそ作れる価値を提供することが本当に重要なことだ」(井戸社長)
その具体策として、eufyではコールセンターをアウトソースしないという。
「買った製品に不具合や不満があったときに、購入者店舗に相談したり、メーカーのコールセンターに電話したりすると思う。しかしそうした声を品質改善や新製品開発に生かしている度合いはメーカーによって大きく異なると考えている。私たちはコールセンターをアウトソースせず、訓練された担当者が1件1件のメールや電話に対応する。その声を製品開発部門、品質管理部門に迅速に共有し、具体的なアクションにつなげていく仕組みを創業当初から持ち、ずっと続けている」(井戸社長)
eufyは、“どうしたら一番お客様の期待に応えられるか”という理想から逆算して作られた「“インターネットネイティブ”なメーカー」と井戸社長は話す。
海外メーカー(アンカーは中国に本社がある)の製品を我々が使うに当たってのデメリットの一つに「サポート」が挙げられる。連絡先が分からない、電話でのサポートを行っていない、連絡がつながらないなど、国内メーカーに比べてさまざまなトラブルが生じやすいのは確かだ。このあたりをいかに解消し、ユーザー満足につなげていくかにも注目したい。
IoT製品も今後発表予定
井戸社長は発表会の最後に、アマゾンのクラウドベース音声アシスタントサービス「Amazon Alexa」と連携する家電製品を2017年に発表すると話した。
「eufyの製品は単なる家電として単体で使われるものではないと考えている。私たちはその先、すなわちスマートホームの領域を見ている。米国市場ではすでに大きな流れになっているが、アマゾンのAlexaと連携する商品を2017年に発表する予定だ。スマホアプリから操作できる製品も同時にリリースしていく。新しい製品群の発表を通じてeufyならびにAnkerグループは新しい成長段階へ進んでいく」(井戸社長)
ただ、Amazon Alexaのほかにも、アップルの「Home Kit」などスマートホームを実現するための仕組みはいくつかある。「いろいろなプラットフォームとの連携も視野に入れている」と井戸社長は話していた。
今回の家電新ブランド発表はまだまだ序章に過ぎないようだ。今後の展開にぜひとも注目したい。
(文・写真/安蔵 靖志=IT・家電ジャーナリスト)
記事タイトルを「アンカーの新家電ブランド「eufy」は期待外れ!?」から「アンカー、ロボット掃除機「Eufy RoboVac」など新ブランド発表」に変更しました[2020/2/7 11:30]