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 おいしいだけ、便利なだけではもはや売れない。今、消費者の心を強く捉えているのが「語れる商品」だ。それも、SNSでつながる見知らぬ誰かにではなく、身近な人につい語りたくなる強いストーリーを持ったものが存在感を増している。

 その象徴といえるのが、手の込んだ製法で個性を打ち出したクラフトビール。驚くほど多様性があり、知れば知るほど深みにハマる。結果、つい飲みながら語り合い、リアルな場で「いいね!」を共有したくなるのだ。従来はビール好きのたしなみだったニッチなジャンルが今、一般化しつつある。

 クラフト化の波はとどまるところを知らず、ビール以外にも拡大を続ける。京都発の和製クラフトジンや、カカオ豆の産地ごとの味を堪能できる「Bean to Bar」を体現した「明治 ザ・チョコレート」(明治)が異例のヒット。どちらも飲み比べ、食べ比べができる楽しさが知識欲をくすぐって共有を促し、裾野を劇的に広げている。

クラフトブームの最先端「クラフトジン」

ウィスク・イーは京都にジン専用の蒸留所を設立した。京都産の素材を数多く使用している
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宮下酒造「岡山」長年焼酎やウイスキーで培った蒸留技術をジンに応用。樽貯蔵で熟成するのが特徴
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 ジンは原材料として、香り付けのスパイスなどを組み合わせて造る。国産クラフトジンでは、サンショウやユズなど日本独特の素材を使う他、地域の特産品を使うなど、他の酒類と比べて個性を出しやすいのが特徴だ。

 この多様性やオンリーワンのストーリー性に、知識欲の強い“クラフト好き”が敏感に反応。飲みながら好みを語り合ったり、誰かに薦めたりと、これまでなかった“語れるジン”に熱い支持が集まった。

 酒類の輸入販売を手がけるウィスク・イーが16年10月に発売した「季の美 京都ドライジン」は、玉露を使うなどした限定品9000本が発売直後から品薄に。17年6月にはアサヒビールが、7月にはサントリースピリッツが個性的な味わいの高級ジンを発売して参戦。「数年前まで1本3000円以上のクラフトジン市場はほぼなかったが、急激に立ち上がった」(ウィスク・イーCEOのデービッド・クロール氏)と言う。

「季の美 京都ドライジン」
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アサヒビール「ニッカ カフェジン」リンゴや和かんきつを使い50年以上使用する伝統の蒸留器で造る高級ジン
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サントリースピリッツ「ROKU」ビームサントリー社と共同開発した高級ジン。桜花や煎茶などを使用
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 ジントニックはそのベーシックさ故、バーの実力がわかるカクテルともいわれ、バーテンダーもクラフトジンに熱い視線を注ぐ。アサヒビールの山根卓也氏は「ジンとトニックウォーターの配合比といったレシピだけでなく、ジンそのもので他店と違いを出せる点が、バーテンダーには魅力的」と分析。“酒の伝道師”をも巻き込み、ブームは加速している。