1993年に日本のヤマハ発動機によって誕生した電動アシスト自転車。ペダルをこぐ人力を電気モーターの力が補助する画期的な商品は、シニア・主婦層向けアイテムとして人気が高まり、買い物用自転車の定番として定着。今や欧州、中国、米国などでも高い人気を得ている。特に欧州では日常使用の自転車だけでなく、MTBやロードバイクなどのスポーツタイプの電動アシスト自転車も多くリリースされ、新たなスポーツ・レジャージャンルとして人気が拡大している。

 日本では現在、電動モーターのアシスト比率などの違いから、欧州などで発売されているアイテムにそのまま乗ることができない。そのため、数年前まで本格的なスポーツタイプの電動アシスト自転車が発売されてこなかった。しかし今年、日本規格に合わせた海外メーカーの電動モーター(ユニット)の発売が発表され、ヤマハやパナソニックなどの日本メーカーからもロードバイクやMTBタイプの電動アシスト自転車が続々と発売されるなど、一気に注目度が高まっている。

女優・創作あーちすと のんさんがアンバサダーを務めるBESVなど、欧州などで高い人気を得ているブランドも日本で続々と新モデルをリリース
女優・創作あーちすと のんさんがアンバサダーを務めるBESVなど、欧州などで高い人気を得ているブランドも日本で続々と新モデルをリリース

欧州、米国ではレースから旅まで電動アシスト自転車活用法が拡大

 日本の電動アシスト自転車はこぎ出しから電気モーターのアシストが始まり、時速10kmを超えるとアシスト力が徐々に低下、時速24kmでアシストが切れるシステムになっている(道路交通法施行規則)。それに対して欧州では、時速25kmでアシストが切れるタイプと時速45kmまでアシストされるタイプがあり(Bike Europe/www.bike-eu.com調べ)、国によってはヘルメット着用が義務付けられている場合も多い。

 電動アシスト自転車といえば、日本では俗にいうママチャリ(買い物用自転車)を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし前述の通り、アシスト力が強いユニットが搭載されていることが多い海外では、MTBやトレッキング(旅用)自転車などざまざまなタイプが販売されており、レースや本格的な自転車旅、都市での観光の足としても活用されている。

 例えば、参加者・観客合わせて延べ人数約7万人以上を誇る北米最大規模の自転車イベント「シーオッタークラシック」では、プロ選手からシニアのアマチュアライダーまで参加する電動アシストMTBのXC(クロスカントリー)レースを開催。欧州のアルプス各地では、電動アシストを使ってきつい上りコースを走り、アシストをOFFにして爽快なダウンヒルを楽しむといった遊び方の人気が高まっている。

「シーオッタークラシック」の電動アシストMTBのレースでは、岩場でジャンプするなど本気の走りで順位が競われる
「シーオッタークラシック」の電動アシストMTBのレースでは、岩場でジャンプするなど本気の走りで順位が競われる

日本発のE-MTB&E-ロードバイクも登場! 海外ブランドの日本規格適合モデルも上陸

 海外から人気に火が付いたスポーツタイプの電動アシスト自転車だが、2015年にヤマハがロードバイクタイプの「YPJ-R」を、2017年にはパナソニックがMTBタイプの「XM1」を発売。

「パナソニックXM1」にはパナソニックが自社開発したスポーツタイプのアシスト機構が搭載されている
「パナソニックXM1」にはパナソニックが自社開発したスポーツタイプのアシスト機構が搭載されている
「ヤマハYPJ-R」に中大型バッグを装備すれば、無理なく荷物を運びながら長距離を走る自転車旅行も楽しめる
「ヤマハYPJ-R」に中大型バッグを装備すれば、無理なく荷物を運びながら長距離を走る自転車旅行も楽しめる

 また、海外の多くの電動アシスト自転車に搭載されているドイツメーカー、ボッシュのプレミアム電動アシスト自転車用ユニットが、アシスト時速24kmまでの日本規格に適合したモデルを展開することを発表。そのユニットが搭載された米メーカー、トレックのバイク「VERVE+(ヴァーヴ)」は2017年末ごろに発売が予定されている。

 さらに世界最大規模の自転車部品メーカーである日本のシマノは、海外で電動アシスト自転車ユニットの販売をすでに開始しており、今後は日本での展開も期待される。このように、2017年は日本でもスポーツタイプの電動アシスト自転車の人気が広がっていくことが予想される。

自転車ショー「サイクルモード」や専門店など、試乗して比較できる機会が増加

 ここ数年のスポーツタイプの電動アシストに注目度の高まりを受け、日本最大級の自転車の祭典「サイクルモード インターナショナル」では、3年前から電動アシスト自転車にフォーカスした「e-BIKE EXPO」を同イベント内フェアとして開催。2017年11月3日~5日に開催が決定している今年も、前述のヤマハのロードバイクタイプのYPJ-RやパナソニックのMTBタイプのXM1、スタイリッシュな街乗りモデルを多くリリースするBESVなどを実際に試乗できる。

全長約1.4kmの屋内試乗コースが用意されている「サイクルモード インターナショナル」では雨の日でも試乗可能
全長約1.4kmの屋内試乗コースが用意されている「サイクルモード インターナショナル」では雨の日でも試乗可能

 また、2011年に代官山T-SITE内にオープンした電動アシスト自転車専門店「モトベロ」では、1年を通して様々なタイプの電動アシスト自転車を試乗&比較してから購入することが可能。代官山の他、東京・自由が丘、二子玉川、神奈川・湘南、大阪・枚方、広島と展開している同ショップでは、今後、スポーツタイプの電動アシスト自転車人気拡大によって他の都市・地域に店舗を拡大することも想定されるということだ。

 試乗できる機会も増えてきているスポーツタイプの電動アシスト自転車は、今年後半、「電動アシスト自転車=ママチャリ」というイメージしかない人の意識を変えていくことにもなりそうだ。

日本で発売されている主な電動アシスト自転車すべてを取り扱う「モトベロ」。購入者には安全点検永年無料のサービスも行う
日本で発売されている主な電動アシスト自転車すべてを取り扱う「モトベロ」。購入者には安全点検永年無料のサービスも行う

(文/星野知大)

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